海で・・ 120
扉を閉めると、一目散にバスルーム目指して駆け込む。
出してしまった精液のことも気にはなったが、今はそれよりも早く一人になりたかった。
服とズボンを脱衣所に脱ぎ捨てると、そのまま風呂場に入る。
お湯が一杯になった浴槽に身体を沈める。
その瞬間、涙が溢れだした。
僕は、外に聞こえるのを気にすることも忘れて、大声で泣いた。
陰毛に付着していた精液が湯に溶けず、空に漂う雲のように浮かんでいた。
その湯面に向け、溢れた涙がぽたぽたと落ちていく。
「う、うううう・・・」
嗚咽がバスルーム内に木霊し、一層に大きくなる。
「一馬くん泣いてるぅ〜!」
キッチンに立つ真帆は慌てて、一馬の元に向かおうとした。
その腕をミキは取り、頭を左右に振った。
「1人にしてあげましょ。」
「う・・うん。」
心配気な真帆の肩をミキは黙って抱いた。
…少しして、ひととおり泣いた後は、何かスッキリした気分がした。
「ふう…」
こんな恥ずかしい姿はミキさんや真帆には見せられないよね…
まあ、自分でも驚くぐらい大声で泣いてたから、筒抜けで聞こえてたかもしれないけど…
「一馬くん、大丈夫?」
外からミキさんの声がした。
「あ、、は、はい。」
「よかった。」と、顔を覗かせるミキさんに焦り、僕は慌てて背を向けた。
セックスする時は何でも無いのに、こんな風に裸を見られると恥ずかしさを覚えるのが不思議だった。
「着替え、おいとくね。」
そんな僕を察してなのか、ミキさんは早々に扉を閉めた。
もしこれが真帆だったら、こうもいかなかっただろうと考えながら、僕は浴槽の縁に腰を下ろし、いかにもミキさんらしい香りのするボディーソープを垂らし、股間を丹念に洗った。
そして、此れからヤルであろう寝室での行為を考え、皮を捲り下ろす。
人差し指で亀頭の窪みに付着した粕を剥がすと、ゾクッとした悪寒が背中に走り、僕は思わず腰を上げた。
勃起すれば鈍感になるそこも、平常時には酷く敏感であることを、僕はこの作業をする度に思いしらされた。
気分をスッキリさせて、風呂を出る。
脱衣所のカゴの中に着替えが置いてあった。
その上には、ミキさんの字と思われる書き置きが。
『私の寝室に来てね(はぁと)』
ミキさんも、その気があるということか?