PiPi's World 投稿小説

海で・・
官能リレー小説 - 年上

の最初へ
 10
 12
の最後へ

海で・・ 12


まず、ミキさんと信藤さんのお母さんは、当初『妻』ではなく『愛人』だった。
(このとき、彼女はまだ18歳だったという)
彼女がミキさんを身ごもっていたとき、広隆さんの『正妻』も出産を控えていた。
しかし―
『正妻』の女の人は、出産直後に体調が急変し亡くなった。
生まれてきた子供も、身体が弱くすぐに亡くなってしまった。

一方で、『愛人』の彼女は無事にミキさんを産み、そのまま退院した。
広隆さんも嬉しくて、ミキさんをとても可愛がったという。
この直後、ミキさんのお母さんは『愛人』から『正妻』になった。

それからは順調だった。
ミキさんが生まれてから7年後、第二子の妊娠―つまり信藤さん―がわかる。

しかし、それと同時に、広隆さんは海外の長期出張に行ってしまった。
しかも、現地で知り合った日本人の女性と、恋仲になってしまった。
当初は日本に残した『正妻』のことも考えたが、海外に滞在しているうちに存在は薄れていった。

日本にいる彼女は、噂でそれを知り、非常に憤慨した。
出産直前、広隆さんは帰国したが、現地で知り合った相手も一緒だった。
しかもその相手は「自分こそが広隆さんの妻」と主張しだした。
離婚届を準備して待っていたミキさんのお母さんの決意は固かった。

離婚後、当時7歳だったミキさんは広隆さんが親権を持った。
その直後、信藤さんが生まれた。
つまり、二人は実の姉妹なのにもかかわらず、一度も顔を合わせていないのである。


ゆったりと身を沈める皮貼りのシートは、ファミリーカーしか載ったことのない僕にとっては、居心地の悪いものだった。

「軽蔑するか?」
横でハンドルを握る広隆さんはただ真直ぐに前を見つめていた。

「は、はい・・あまりに身勝手だと思います。ミキさんと信藤さん・・それに彼女たちのお母さんが可哀想です・・」
僕は顔を紅潮させながらも、正直に言った。

「確かに君の言う通りだな・・酷いことをしたと思っている。彼女にも・・二人の子供にも・・」
広隆さんの目尻に微かに光るものを僕は見た。
広「という、ことなんだ」
「波瀾万丈過ぎて…何というか」
広「僕のせいで、彼女を散々振り回してしまって、申し訳なく思っている」
離婚直後、広隆さんの仕事は軌道に乗った。
広隆さんは信藤さんのお母さんに多額の慰謝料を支払ったという。

「わざわざ、昔のことを話していただいて…」
広「いや、美貴と交際しているんだから、一馬くんにも知っておいてほしかったんだ」
「このこと、伝えてもいいでしょうか」
広「君のほうでお願いしたい。僕が彼女達に会うと、面倒なことになりそうで」
「わかりました」
真実は複雑すぎた。
理不尽なところもあるけれど、広隆さんは後悔していて、謝罪の気持ちもあるのだろう。
そして、ミキさんと付き合っている、僕にも、伝えたかったことがあると思った。

広隆さんはそのまま、僕を家まで送ってくださった。
「今日は、本当にありがとうございました」
広「いや、こっちこそありがとう。美貴のこと、よろしく頼むよ」
そう言うと、車を走らせ、去っていった。

やっと真実がわかった。
僕は安堵すると同時に、今まで以上に、ミキさんを大切にしようと心に誓ったのだった。


「貴方、中原美貴さんとお付合いしている鈴木一馬さん?」

どきりとした・・
突然に門の前で、1人の美しい女性に声を掛けられたのだ。

「今の車・・中原さんよね?」
「え?・・」
僕は彼女の顔をまじまじと見つめ、眼を命一杯に開いた。

ミキさんより幾分かは年上で細身の・・それでいて豊かな乳房を持った女性・・・
その容姿は、ミキさんにとてもよく似ていた・・・

その時は、この女性が広隆さんの亡くなったとされている第1子・・・
ミキさんのお姉さんにあたる人であるとは、僕には考えもおよばなかった。

SNSでこの小説を紹介

年上の他のリレー小説

こちらから小説を探す