海で・・ 1087
「ありがとう…やっぱり一馬くんは優しいのね…」
そう言いながら、テーブルの上の僕の手を握り締めてくる梨花さん…
これはハグみたいなものなんだと分かっていても、なんだかドキッとしてしまう…
「あっいえっ;….それは当たり前のことじゃないですかぁ…」
顔が高揚してきてしまう;…
木崎さんの前だっていうのに、これじゃまるで童貞みたいだ;…
梨花さんとしたあの時の瞬間が思い出されてドキドキしてしまう。
きっと木崎さんともあんなことを…想像が膨らんでいく。
お茶とお菓子を頂き、ミキさんと一緒に家を出る。
また来てね、と言われたけど2人の時間を無駄にはさせたくないしなあ。
「素敵だったなぁ…」
「うん…」
ミキさんもああいう大人の男に憧れるんだろうな…
そう思うとちょっとジェラシーを感じてしまう;…
「でもよかったは…お姉ちゃんにいい人が出来て…」
それは僕も同感だ。
梨花さんは今まで散々苦労してきたんだからね…
エンジンがかかり、車が動き出す。
曇り空の間から薄日が差してきた。
「私も早く胸張って一馬くんが愛する男だって言いたいな」
「ミキさん…」
「あんなに幸せなら、そう思っちゃうよ」
「僕も…もっとミキさんに相応しい男になりたい」
「一馬くん…そっちはもう合格、かな」
そっちって…?
運転をするミキさんの顔を横から見てしまう…
クスッと笑うミキさんは、何かを含んだように頬を大きく上げた…
ああそういうことか…;
合格って言っても、いつも今日みたいにはいかないと思いますけど;…