海で・・ 1082
「ごめん、一馬くんも気になるよね」
「梨花さんは…」
「ちょっと体調がすぐれないのは本当だよ…でも、重い病気とかじゃないの。むしろね…」
他の客がいなくなり、余裕の出た咲乃さんは僕らをキッチンからはまったくの死角に呼び、告げる。
「梨花、もしかしたら妊娠したんじゃないかって…」
「うぇ?!…妊娠ん!?…」
ミキさんと同時に驚愕の声を上げてしまう;…
さすがに店内では、ここまでの話しはミキさんも聞いてはいなかったんだろう…
「に、妊娠って…それって間違いないのぉ?…」
声を潜めながらも、ミキさんは眼を見開いていた…
「私も確証は持てないんだけどね…でも、梨花は本当に具合悪いわけじゃないみたい…食欲はあるし、ちょっと気怠そうかな?っていうくらい」
「お店い開けてる時以外は…」
「しばらく私も一緒に…心配だからね」
「お医者さんには?」
「今度行く予定だけど…」
「この後、梨花さんに会いに行こうと思ってるんです」
「それはそうしてあげてぇ〜このまま帰したりでもしたら、私が怒られるもの〜」
よかった…梨花さんの顔も見ないで帰ることになったら、ホントに咲乃さんの料理を食べに来ただけになっちゃうもんね…
「それにしても梨花さんにそんないい人がいたなんて、ちっとも知らなかったよ。」
「あっ、その話しは梨花から直接聞いて、…」
ん…?
咲乃さんが言えない訳でもあるのかな?…
食事を終えて、会計を済ませて店を出る。
当然ながらミキさんが全部支払ってくれるのだが、そこにまだ何か差を感じる。
学生と社会人では仕方ないと思いつつも。
「こっちのお家なのね。あの時は気づかなかった」
奥に隣接するようにある家にミキさんと一緒に向かう。