海で・・ 1070
「しばらく帰らないかもしれないから、そのときはお昼も好きに食べていいよ」
「はい」
歩いてすぐのところにコンビニはあるし、カップ麺もあっただろうし…
父さんとみゆきさんが家を出て数分後。
僕はベッドに寝転がりまったりする。
申し訳ないけどこれが一番の幸せなんだ。
「…ん」
メールの着信が。
「あっ、ミキさん…今暇かなぁって…」
今このタイミングなら家に来てもいいのかも…
『よかったら家に来ませんか?…』即座に返信…携帯を鞄に入れっぱなしにしていなくてよかったよね。
『それも素敵だけど天気もいいし、お姉さんの所に行こうと思っているの…』
ん?…お姉さん?…あ、梨花さんのところかぁ。
梨花さんとは暫く会ってないし、咲乃さんも何時でも歓迎って言ってくれたし…何より久しぶりに海が見たいよね。
早速父さんに外出するとメールを送ると、気をつけろよという一言。
ありがとうとお礼を返信した後、またミキさんにメールを送った。
それから数十分して、ミキさんが車で迎えに来てくれた。
「ごめんね、いきなり」
「いえ、僕も暇でしたから」
「一馬くんとドライブデートも兼ねて。付き合ってるのにロクにしてないなぁって思っちゃって…お店から私たちが出会った海も見えるし」
そうかあの海か…
まだ泳ぐにはちょっと早いけど、もうすぐ1年になるんだよな…
「なんだかこの1年、凄く充実していた気がします…」
それはもちろんミキさんのお陰であって、あの海が無かったら僕は今ここにこうしていることも無かったんだもんな…
「私もよ。一馬くんと出会ったことでいろいろと変われたのかも」
車に乗り込み、エンジンをかけ発進させながらミキさんは言う。
「一馬くんがいて、真帆がいて、姉さんもいて…もしかしたら全然知ることもなかったかもしれなくて。運命って面白いよね」
「ですね」
窓の外が住宅街から、次第に変わっていく。
あの海ってこんなに近かったっけな、と思いながら僕は運転席のミキさんと交互に眺める。