海で・・ 1062
「樹齢何千年だとか…以前聞いたことがあって。私たちはこの樹によって守られているんだなって感じるの」
「そうかもしれないね」
大木のインパクトのほうが大きかったが、彩花の家自体もかなり広大な土地に見える。
樹の中心から庭園が広がっていた。
もしかして、彩花ってかなりのお嬢様なのかも…
「凄い広い敷地だね…住宅街の中とは思えないよ…」
「初めて来た人は皆さんそう言って驚くけど、お家はたいして大きくは無いのよ…」
確かに赤い屋根の洋館の建物は、この広大な敷地内ではさほど大きくは見えないけど、それでも僕の家よりは確実に大きいよ;…
庭園を横切るように歩き、彩花に自宅に招かれる。
「お手伝いさんとかいそうだね」
「今はお暇じゃないかしら」
「本当に誰もいないの?」
「今は…ね?」
彩花が僕を見て微笑む。
…その目は完全に何かを期待されている気がした。
まあ僕だって“家に来ないか…”って誘われた時から、考えてない訳では無いんだけど;…
「お母さんは何時頃に帰ってくるの?…」
それはやっぱり気になる…
ヤッてる最中にお母さんと初対面だなんて、洒落にならないもんね…
「夕方頃くらいですかね」
「そう…」
曖昧過ぎてもう…ちょっと不安なんですけど。
「安心してください、お母様が帰ってきたとしても私の部屋にすぐ乗り込むことはないですから」
「…だよね」
「彩花は兄弟はいないの?」
「姉が2人…就職や進学で今はここには住んでませんけどね」