海で・・ 1061
それでも次第に店内は混んできて、僕たちの席が空くのを今か今かと待っている人たちが多くなってくる;…
やっぱり此処は図書館って訳じゃないから仕方ないね。
「どうする?…何だか居ずらくなってきたけと….」
「やっぱり休みの日は混むんだね….平日なんてガラガラなのにぃ」
彩花はジュースのコップを空にすると、読んでいた本をパタンと閉じる。
「ここから出るしかないかな」
「でもどこへ…」
「今は私だけですから、一馬くん、私のお家に来ませんか?」
「え、彩花の…?」
「ここからも割と近いですから」
「僕は構わないけど、家の人に悪いんじゃない?…」
「大丈夫ぅ、母は暫くすると帰って来ちゃうんだけど、父はゴルフで一日いないからちょうどよかったはぁ。」
そんな訳で彩花の家に向かう…
本当はずっと2人っきりでいたいところだったけど、そんな都合良くはいかないよね…
できれば2人きりなのが一番だが、あいにくそうもいかないのが現実。
今までの図書室のソレだって奇跡に近いものだったのだから。
住宅街の中にひと区画だけ森のようになった部分がある。
「ここですよ〜」
「えっ…彩花の家なの!?」
大きな木に覆われたそこに家があるなんてとても思えない…
「この木って国の定めた保存樹らしくて、切ることは許されないらしいのよ…」
「へぇ〜凄いなぁ。この大木、僕の家からでも見えるよ!」
小さい頃から気にはなっていた…でもまさかこの木の下に彩花の家があったなんて驚きだ…