海で・・ 1058
「もう、みゆきさんまで…そういう人って何人いるかわかんないですよ〜」
「あら、一馬くん争奪戦?大変ねぇ」
…僕はみんなのことが大好きだから選べないです。
もちろんみゆきさんも。
そんなみゆきさんと過ごす休日は新鮮で、でもいつも通りまったりと時間は流れる。
父さんも昼前には家に帰っていた。
「あんな朝早く、どこに行ってたんだよ?…」
それゃあ当然聞くよね。
「はは、ちょっと娘の顔を見になぁ…」
父さんは照れて笑った…
「何だぁそうだったの?…そうならそうとみゆきさんに言えばよかったのに…」
まあ親バカ加減に言えなかった父さんの気持ちも分かるけどね;…
「だってよお前…夕べのあんな声聞いちゃ、平常心でいられる訳ないだろ…」
ゲッ!?…
聞かれていたんですかぁ…;
みゆきさんが部屋から出たのを見て、父さんに改めて話す。
「あれは…」
「言わなくてもわかるさ。一馬だってそういう歳になったんだ。俺とあかりのも聞かれているんだからお互い様さ」
「そっか…」
「みゆきさんと俺が寝たらあかりを裏切ることになるから…一馬にはすまんなと思うよ」
それってやっぱ、みゆきさんが迫ってきたって分かっているんだね;…
「いやぁ僕はみゆきさんとそういう関係になれてよかったと思っているけど…」
「ぅぉほん…;まあ男のお前はそうだろう;…いつまでも一人でってのも寂しいもんな…」
なんか誤解してるような;…
「父さんには言わなかったけ?…僕はもうだいぶ前に童貞は卒業したんだけど;…」
まあだいぶ前と言っても、あの海からまだ1年も経ってはいないんだけどね;…
「おう、それは知ってるさ。結婚するまでは一筋と決めることはないしな」
「まあねぇ…」
…父さん、もしかして子供を見に行ったんじゃなくて紀美子さんのところに、なんて考えるけど、もちろん口には出さない。
男の悲しい性かもしれないな。
父さんに代わってちょっと出かけよう。
久しぶりに本屋でも行ってみるかなぁ。