海で・・ 1031
皆が部室に去った後、美優ちゃんだけがそこに残っていた…
「あれっ…どうかした?」
それに気づいたミキさんが声を掛ける…
「ごめんなさい…私が変なコスチュームを作ってしまって…」
あっそうだった…あの水着は美優ちゃんがデザインしたって言っていたよな…
「ごめんね、気にしないで…変とは思ってないし、美優ちゃんがそういうデザインを提案してくれたのはすごくうれしい。ただちょっと過激だったね」
ミキさんはフォローする。
「一馬くんは…」
「ちょっと抵抗があるかな…遠くから見たらほとんど裸だしね…」
「やっぱりそうかぁ…」
「まあそれが美しいと私は思えるけど、それに目くじらを立てる大人は多いと思うのよね…」
確かに…高校生に関して殊更に、性的なことから遠ざけようとする頭の硬い父兄は多いからな…
「そうですね…それじゃあ今回のことは無かっということで…大切な部費を無駄遣いしてしまってすみませんでした…」
美優ちゃんは肩を落とし、コスチューム片手にプールサイドを歩いて行く…
…肩を落として歩く後ろ姿、なんだか申し訳ない気持ちになる。
「ミキさん…」
「一馬は気にしないで…美優ちゃんは強い子だから…」
ミキさんは僕の肩に両手を置いた。
「ちょっと行ってくる…」
「ふふ、一馬くんらしいな、そこは」
ミキさんと別れ、僕は美優ちゃんを追う。
「ちょっと待ってよ美優ちゃん…」
追いついた先は、今使われていない男子水泳部の部室前だった…
「鈴木くん…どうしたの…?」
「よかったらそれ穿くよ…、せっかく美優ちゃんが作ったんだろ?…」
別に水着を穿くぐらいであんなにも抵抗した自分が、今では情けなくもあった…