海で・・ 103
この上で僕は、幾度となく秀人とプロレスの技を掛け合いをし、連載マンガを楽しみに読み、始めて好きになった子の相談もした。
中学に入ると、生えてきた毛を見せ合ったり、シーツに隠れ、秀人に初の自慰を教えてもらったのも、このベッドの上だった・・
僕は感慨深く、シーツを撫でる・・
それはホテルのシーツのようにピンと張り、ぐちゃぐちゃだったあの頃とは、別物のようだった。
「お待たせ」
由佳里さんが部屋に入って来た。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
持って来たコーヒーをもらう。
由佳里さんはそのまま僕の隣に座る。
その重さでスプリングが微かに跳ね、コーヒーを持つ手がぐらりと揺れた。
「熱ちぃ!」
僕は反射で声を上げていた。
「ごめん!!火傷しちゃう!直ぐ脱いで!」
由佳里さんは僕の行動よりも早く動き、ジャージのズボンをあっという間に踝まで下げられた。
「大丈夫?」
「ええ、特に何も…」
「よかった…ごめんね」
由佳里さんは安心すると、優しい笑顔を見せる。
…しかし、タイミングが悪かったかもしれない。
由佳里さんに下げられたジャージの下、僕の股間はこのベッドで行われていただろう秀人と真帆の行為を妄想してしまったことで、明らかに興奮していたからだ。
「…えっ」
「あっ…」
沈黙。
なんだか気まずくて、由佳里さんの顔を直視できず、思わず見ないふりをして横を向く。
…いくつになっても、女性経験を持っても、由佳里さんに軽蔑されるのはつらい。
…しかし
「一馬くんも、男の子だね」
目の前の由佳里さんは、優しい笑顔でそう言った。