海で・・ 102
「い、いえ、別に…」
涙が出そうになるのを何とか抑える。
「こんなところで話すのも何だし、私の家に来てよ」
「え、でも・・」
「気にすること無いはよ。昔は秀人がいなくてもよく遊びに来たでしょ?」
「は、はい・・」
確かに、授業をサボって1人で秀人の部屋で時間を潰したり、
夜遊びから帰って来ない秀人を待って、エロ本片手にオナったことさえあったのだ。
「うちの親も旅行でいなくて、ちょっとさみしいしね」
「そうなんですか」
誘われるがまま、由佳里さんと一緒に家に行く。
「お邪魔します・・」
静まり返った家は寂しかった。
秀人がいる時は、何足も脱ぎ捨てられていたスニーカーはもうそこには無かった。
「どうぞ、冷たいものでも出すはね」
「あ、お構いなく・・」
「まぁあ。そんな畏まらなで、秀人の部屋でも行っててよ。」
「秀人の部屋?」
「ええ、何時根を上げて帰ってくるか分からないでしょ?だからそのままにしてあるのよ。」
「はい!」
僕はなぜだかとても嬉しくなった。
秀人の部屋。
最後に来たのは夏休みだったか?
まだ、あの海でミキさんやアヤさんに出会う前のことだ。
懐かしく思うと同時に、嬉しかった。
部屋は綺麗に整理してある。
由佳里さんか、お母さんが掃除したのだろう。
僕は色々と物思いに耽りつつ、主のいなくなったベッドに腰掛ける。