海で・・ 1006
「家に帰ることもあるんですか?」
「たまにだけどね。それこそ年に数回」
料理人になる夢を追いかけ、親に見捨てられながら頑張ってきた咲乃さん、初音はずっとその背中を見てきたんだと思う。
「私だって初音の側にもっといたいよ。あの子がつらい思いをしたときに励ますことができなくて…」
なんだか一人っ子の僕としては羨ましくなる…
こんな素敵な姉さんがいたら、僕の人生も少しは変わっていただろう…
「もうこっちで家族と暮らすことも無いんですか?…」
「ええ、出来れば梨花とあの店をずっとやっていくつもり…今では段々と常連さんも着いてきて、いい感じなのよ…」
オープンからもうすぐ半年経つのかな、うまくいっているようで良かった。
「スタッフは集まってます?」
「ホールも厨房もそれなりにね。なるべく女の子で、って梨花が言うから」
「また行きたいですね。初音も一緒に」
「ふふっ、待ってるからね」
「はい是非…ところで梨花さんはお元気ですか?…」
「ええ、梨花は相変わらずだは…言い寄って来る男も後を絶たないし…」
それゃあそうだろう…梨花さんみたいに雰囲気を持った美人、そうはいないもんな…
「それじゃあお付き合いしている人とかいるんですか?…」
「当分それはないと思うよ。全部断ってお店に集中したいって言ってた」
「そうですか」
なぜかホッとする自分がいる。
「口コミで噂は広がるのかなぁ、メニューの味より美人の店員がいるって方が先行しちゃうのよね〜」