海で・・ 1005
「マジですかぁ?!…」
つい昨日に初音と噂したばっかりなので、その声を聞いて余計に驚いてしまう。
僕は慌てて玄関のドアを開けた。
「よぉ!久しぶりぃ!」
咲乃さんは指を二本立て、敬礼するみたいにそれを翳して僕に見せた。
「うわぁホントに咲乃さんじゃないですかぁ!?〜、感激だなぁ〜!」
「一馬くんとはお母さんが大変なことになってたあの時以来だから、心配だったんだ」
「あの時はありがとうございました」
「梨花から話は聞いたよ。今は大丈夫?」
「はい、父さんは事実上再婚相手もいますし、もうすぐ僕にもきょうだいが…」
「それならよかった」
咲乃さんは安心したように微笑む。
薄手の服の下で、豊かな胸が波打って見えて、そこに着目してしまうのは男の性かな…
「ああ上がってください…今は僕一人なんですけど…」
「悪くないかしら?…突然来たんだから、元気そうな一馬くんの顔を見れただけで、もう充分満足だよ…」
「何言ってんですかぁ、はるばる遠くから来てくれたのに、このまま帰したら逆に怒られますって…」
僕は咲乃さんの手を取り、家の中へと誘う。
「もぉ、そう言われたら仕方ないなぁ」
咲乃さんはそう言うが、その顔は楽しそうだ。
「お父さんはお仕事?」
「いえ、新しい人…もう出産が近いので、病院に一緒に行ってます」
「へぇ、一馬くんもお兄さんになるわけだ」
「はい」
「一馬くんは私のようにはならないでね。どうしようもない姉で、妹には迷惑かけてばっかりなんだから」
「そんなこと無いですよ…初音は咲乃さんのこと尊敬してますよ。」
もしかしたら初音も、咲乃さんみたいに料理の道に進むかもしれないよな…
「あの子はホントにいい子…勘当されてた私のことを取り持ってくれて、今では両親とも会えるようになったは…」