海で・・ 1002
『ありがとうございました。
恵さんが望むなら、またこういう機会を考えてます。
また学校で 鈴木一馬』
書置きを残して家を出た。
一応携帯の番号とメールアドレスも残してみたけど…後は恵さんに任せよう。
自宅に戻ると鍵がかかっていた。
そういえば父さんはあかりさんを連れ病院に行くっていってたっけ。
誰もいない家の中は当然シーンと静まり返っていた。
しめしめ…
こんな機会じゃないと、リビングの大画面でAVを観ることなんて出来ないもんね…
僕はそそくさと2階に上がり、クローゼットの奥に隠しておいたパッケージを取り出す。
去年…僕がまだ童貞だった頃に、秀人に借りたままになっていたAVだ…
秀人もすっかり忘れているようで、この前家に遊びに行ったときも催促されることはなかった。
…もう1年経つだろうしなぁ。
「…今度見よう、と思いながらずっと先延ばしになってたからなぁ」
その間に童貞だって卒業できたし。
「ん?」
パッケージ写真の女優が、また誰かに似てる。
ケバい化粧のいかにも秀人好みの年上の女性…
こんな風じゃなかったら、これほどの長い間、見ることも無く放置しておくことも無かっただろうけど…
まあ僕だってミキさんを筆頭に年上の女性も好きだけど…
やっぱりAVのモデルさんとなると、若くあって欲しいと願っちゃうんだな…
…長い時を経てようやく見れたというのに満足感はさほどなかった。
秀人に返すべきかな?あいつももう忘れてるだろうな…
見終わるとパッケージを戻し、またベッドの下に入れた。
…たぶん次はない。
ミキさんをはじめ、今さっきの恵さんまで、実体験に勝るものはないんだなと改めて思う。