運命の海 3
気づいたころには太陽は海の向こうに沈みかけていた。
「す、すごかった…これがセックスなんだな…」
「ああ…」
秀人は満足しきったような顔をし、一馬の方を向いた。
一馬も童貞を卒業できた満足感はあったが、後ろめたい気持ちもあった。
「どうした、一馬」
「いや…」
一馬は横たわる2人のもとに歩み寄る。
腕で顔を隠しすすり泣く雪子と、虚ろな瞳で空を見ている南斗。
「ごめんなさい、お姉さんたち」
「…………じゃあ、これっきりで終わらせないでね」
南斗がそう言う。
言葉の意味が分からず、一馬と秀人はキョトンとする。
「そ、それってどういう…」
「………このままヤリ捨てじゃ嫌、ってこと。私たち、君たちの童貞卒業の相手なんでしょ?」
「あっ…」
「………」
一馬と秀人はお互いの顔を見合い、黙りこくる。
「今日のことは許してあげる」
太陽は海の向こうに沈んでいった。
「行くぞ、一馬」
南斗の言葉を軽く扱うように秀人が一馬を促した。
「えっ、秀人」
「最寄りの臨時駅使って電車で来たんでしょ。たぶん電車もうないよ」
「っ!?」
南斗は背を向け歩き出そうとした秀人に言った。
「私たち車で来たの。君も素直になってくれたら送ってあげるよ」
秀人は一瞬黙る。そしてため息をついて、短く言った。
「しゃあねーな」
「ありがとうございます……ホントにゴメンなさい」
一馬は隣で雪子と南斗に謝罪する。
そんな一馬の姿を見て南斗の心が揺らぎだす。
お互い、海の家のロッカーで入れていた荷物を取り、また集まって駐車場へ向かう。
「これだよ。君たちは後ろに座って」
黒の軽自動車を指差す南斗。そのまま運転席に座る。
(こっちのお姉さんが運転するんだ…ちょっと意外)
「中学生?」
「……はい」
「どこ中?」
「えっと………西中です」
「あら、偶然だね。私たちの後輩じゃん。じゃあ遠回りしなくてもよさそうだね」
「じゃあ、行こうか。」
黒の軽自動車を走らせる、南斗。
4人とも気まずいのか、無口だった。
「本当に、ごめんなさい。」
一馬は、それだけ言って、俯いて黙った。
秀人は、踏ん反り返って、寝たふりをしていた。
だから、南斗と雪子が、一馬を見ていたことが、分からなかった。
「着いたわよ。」
もう地元に着いてしまった。
「さっ、降りて。」
「えっ、」
一馬と秀人は、肩透かしをくらった感じだった。
「なに、何か期待してたの?」
「いえ、そういう訳では・・・」
秀人は、既に車から降りていた。
「一馬、行くぞ。」
「ああ分かった。」
一馬も降りようとしたが、ドアロックを掛けられてしまった。
「南斗、出して!」
「OK!」
そのまま、車は走り出してしまった。
「あの、どうして・・・」
雪子は、後部座席に移動してきた。
「犯されているのを見たら、興奮しちゃうよね。私たちも軽率だったし。
でも君は、ちゃんと謝ってくれたから。」
「だって、ホントは助けなくちゃいけなかったのに・・・」
「だから、一馬君だけに、本当のセックスを体験させて上げる。」