天使なお嬢様 6
執拗にお尻を触ってくる手。
別のところから胸にも手が伸びてくる。
(えっ?2人?いや、何人いるの!?)
突然の行為に困惑し、一樹に助けを求めようとする萌。
しかし一樹は先ほどのラッシュの影響で反対側を向き、体勢を立て直せないでいた。
背後から胸を両手で鷲掴みされる。
「いやっ……!」
小さく悲鳴を上げる萌。
しかし電車が陸橋の上を通り、その音にかき消され一樹の耳には届かない。
(いや、いやいやぁ、お願い、やめてぇ…)
首を左右に振り、涙をためながら萌はわずかながら抵抗する。
しかし、お尻を揉んでいた手が、スカートの中に侵入し、パンティの表面を撫でる。
クチュン、と水気を含んだような感触。
「んあっ、はぁあ…いや、や…」
嫌なのに、刺激されると甘い声が漏れてしまう。
痴漢はそれを面白がってさらに萌の奥深くを目指し手を潜り込ませる。
(助けて、一樹くん、お願い)
萌は必死に手を伸ばした。
その思いが届き、一樹の手に触れることができた。
「萌さん?」
その手は震えていた。
ちょうどいいタイミングで、電車がホームに進入する。
一樹の目の前のドアが開く。
人波に揉まれながら、一樹は萌の手を握り、一緒に電車を降りた。
さっきまで乗っていた電車は発車しホームから離れていく。
それを見送る一樹。隣で手をつないだ萌は俯いて、身体を震わせ泣いていた。
「萌さん?」
「怖かった…怖かったよ…」
その言葉だけで、萌の身に何が起こっていたかは理解できた。
「ごめんなさい」
「一樹くんが謝ることじゃ」
「僕は、まだ萌さんを守れないんだって…」
萌は一樹の身体にしがみつき、身体を震わせ泣いた。
一樹は萌の背中を優しく撫でた。
萌が気が済むまでしっかり抱きしめ、落ち着いたら駅のベンチに座る。
「私も…ダメなの」
「何がです?」
「変な人に身体を触られて、気持ちいい、って思っちゃったの…」