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うちのクラスの【千年さん】
官能リレー小説 - 学園物

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うちのクラスの【千年さん】 7

窓の外がだんだん薄暗くなっていくまで、僕は美乃梨先生と抱き合っていた。暖かくて柔らかくて、幸せな時間。

「冬馬くんならできるわ。頑張ってね。自信がなくなったらまた来て…いつでも相手するわ」

優しい先生に背中を押してもらって僕はいつもより遅い下校時間を迎える。
靴箱のところまで行くと、自分以外の人影に気づく。

「か、亀山くん」
「鶴木さん…こんな時間まで残ってたの?」

「図書室で本を読んでたら、遅くなっちゃって……」
「そうなんだ」

鶴木さんが、はにかみながら答える。
ちょっとした失敗を恥ずかしがるような、そんなはにかみ方が素敵で、僕の心に焼き付く。
靴箱の所に来る少し前、下校時刻を知らせる放送が流れていた。
外は、もう夕日に照らされて西の空が赤い。
何とはなしに、僕たちは連れ立って歩き出した。
夕日に照らされた鶴木さんは、まるで幻想の中の存在のよう。

普段みんなから呼ばれる「千年さん」、意味合いは全く違うけど、今の姿はその愛称?にふさわしいような神々しさを感じる。

「亀山くんもこんな時間まで、何してたの?」
「うん、ちょっと、ね」
本当のことは絶対言えないから、ちょっとぼかす感じにする。

「保健室の千葉先生に相談事があって」
「亀山くん、悩んでる?」
「そ、そんな深刻なことじゃないから」
「私で良かったら、いつでも相談に乗るよ」
いや、その悩みは………でも、鶴木さんは本当に優しい人だな。

「もう解決しかかってるし、その気持ちだけ、ありがたくいただいておくよ」
「うん、良かった。応援してるからね」
「ありがとう」

鶴木さんはとりあえず安心してくれたみたいで、ニコっと微笑む。
その姿も、窓から射す夕日に照らされて、まるで幻想のようで。
おそらく僕がお爺さんになっても、素敵な思い出として忘れないんだろう。

そのまま、僕らは校門を出ても一緒に歩いていた。

「鶴木さんもこっちなの?」
「電車通学だから」
「僕もだよ」
「ねえ、聞いていいかな。鶴木さんって、どんな本を読んでたの?」
「えっ。………うーん」

ちょっと驚いた顔をして、考え込んだ鶴木さん。
一瞬僕も、聞いちゃいけないことだったのかな?と思ってしまう。

「小説、だよ。恋愛小説。男の先生と女子高生の、いろいろな障害があったり、衝突があったり、でも、最後には二人が結ばれあう、心にぐっと響く、そんな感じがする作品」
「へぇ」
少し考えた後の答えは、とても熱がこもった感想だった。
鶴木さんが本が好きだ、ということがよくわかる。

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