うちのクラスの【千年さん】 37
「う゛っ」
……なんだその反応は。
「未羽ちゃん?」
「ソ、ソンナコトナイジャナイー」
「白々しいよ!それに視線反らして」
清い美少女だった頃の未羽ちゃんが恋しくなってくるのは気のせいだろうか。
「そういうことは以ての外だけど、ちょうどいい機会だからこっちはいろいろお話聞いてみたいわね」
「あ、美乃梨先生」
「噂には聞いていたけどラブラブと言うか、鶴木さんが亀山くんにゾッコンなのね本当に」
「そうなんですよー」
「未羽ちゃん、元気一杯だね」
「そ、そんな事無いよ。コホッ、ゴホッ!」
「咳は関係無いでしょうが」
「しょうもない夫婦漫才はその辺にして貰えないかしら?」
「そ、そんな、夫婦だなんてまだ少し早いですよー」
相変わらず都合の良い耳してるなぁ。
美乃梨先生が呆れた表情で僕を見る。
「貴方大丈夫?何か苦労しそうだけど?」
「ま、まあ、完全超人だと疲れますから。多少問題点があった方が人間味も有りますし……」
「そう。でも、視線を逸らさずに言えたら良かったのに」
「……」
「ま、人間、特に女なんて裏の顔の一つや二つ有る物だから変な幻想なんて抱いちゃ駄目よ」
幻滅する系では無かったけど、未羽ちゃんに抱いていたイメージが崩壊してるのは事実なので言葉に困る。
「で、私達に聞きたい事って何ですか?」
「そうねぇ、お互いの相性ってどうかしら」
「もう抜群です!先生、冬馬くんってすごいんですよぉ。バッキバキで、止まらなくって、私メロメロにされて……」
「………そのくらいにしてくれるかな、未羽ちゃん」
「全部事実だよ」
「あのねぇ」
「お盛んなのはいいけど、ちゃんと避妊してる?」
「あ゛っ」
「冬馬くんとの子供なら何人でもっ」
「でも、高校生の間にお腹大きくされるのは困るなぁ」
未羽ちゃんとの子供なら、何人でも欲しいし絶対育てあげるけど、早すぎるとどっちの家族にも迷惑かかるし…うーん。
僕の横では、未羽ちゃんがちょっとうなだれていた。
「でもこのご時世だし、あなたたちが老人になる頃の日本政府に、年寄りの面倒見るだけの力が残ってるかどうか心配だから、早めに子供作っておいたほうがいいのかもしれないけどねぇ。それもたくさん作っておけば子供たちの負担も分散されるから、むしろ子供に迷惑かけずに済むかもしれないんだけどね」
「えっ…?」
「日本がいつまでも平和だという保証だって、誰もできないわよ?」
「そういわれれば、そうかもしれないけど……」
昭和初期の人たちだって、わずか10年後に焼け野原になるとは思っていなかっただろう。
「まあ、先々の事を考えるとさっさと子供作っちゃうのも、一つの人生設計だってこと。ご両親が健在なうちになら、手を借りることもできるしね」
「うーん。それなら親と相談します」
「え?本当に貴女の御両親に相談するの?」
「いやいや未羽ちゃん。親に相談出来る内容?」
「まあ、ウチでも子供はまだ早いから気を付ける様にって言われたから相談したら多分避妊薬位ならなんとかなると思うよ」
「ねえ、私が言うのもなんだけど、ソコは学生の娘に怒るところじゃないの?子供にはまだ早いってね。その辺の締め付けは寛大というか緩いの?」
「今更、最低でも卒業まで禁欲しろって言われても無理だし、在学中に妊娠される位ならって協力してくれると思いますよ」
話が分かると言うかなんと言うか……
「私としては寧ろ場所とかシチュエーションの方が重要な問題です。そこで御相談があります」
まさか未羽ちゃん、美乃梨先生に保健室を貸せとか言うつもりか?曲がりなりにも学校職員だよ?