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香港国際学園〜外伝〜
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜外伝〜 100

青年は親指で胸の中心からやや左を示す。

「余計な破壊と殺戮による技術の誇示、そんな無駄は何一つ無く、一直線にココを狙ってきた。」
動作通り仕立ての良さそうな布地が小さく窪む。

「しかも何だい!そんなに汚しちゃって!今までは、お姉さんが洗濯してくれてたのかい?」
布地の損傷どころか、先の殺戮で少年が返り血に染まった姿に対し、青年のスーツには血飛沫の一粒さえ付かなかった。

刀にしても、超常能力者の基準でさえ、なんの兆候もなく復元して見せた。
再構成、自己修復、そうした範疇を遥かに越えた次元に在る。

いや反対に越えるべきモノどころか『在る』べき事実自体が『無い』のではないかと理解しかけた時点、少年から感情の起伏が消えてゆく。

転じて、畏怖、後悔、絶望。

「君は彼女にとって、本当に出来の悪い弟だったんだねぇ〜?」
尚も軽口を叩く仇に、何も言い返せなかった。

「なのに、お姉さんが僕に、勝てなかった時点で、君は勝てないって予想、出来なかった、かな?」
青年は相変わらず、小馬鹿にした態度で、言葉に区切りを入れつつ諭す。

「あぁご免!怖がらせちゃったね!我ながら大人気なかった!面白い話題にしよう!」
青年は、頭上に電球マークでも浮かべたかの様な笑みを見せる。

「実話系雑誌って知ってる?都市伝説とか裏社会とか?たまに暮らしで役立つ情報とか載ってる奴!」
どうせ殺すんだろうが?今更チケット予約のコツだの、金券ショップの有効利用だの、小銭を得する各種カードの使い方なんぞ教えてどうする?

「ホラ?怖いお兄さんとか『ブッ殺す』って口に出して言うのは色々アレだから?最近は『居なくなって欲しい』って表現するんだって!知ってた?」
最低だコイツ、どこまで空気読めないんだ、いや読まないのか、少年はそう思った。

「何でこんなどうでも良い話するかわかるかい?」
少年には解らない、そして青年が好きそうな漫画よろしく、捨て身の一撃を放とうという気など失せていた。

「君は僕について、具体的には何で勝てないか、気付いてしまった。」
虚数展開カタパルトも、下準備なくしては、片道切符に近い。

「もう知ってる重要な事を聞くより、まだ知らない豆知識の方が有意義だろ?」
解っていた筈だ、背水の陣を敷く、などと考えた時点、負け犬の遠吠え、曳かれ者の小唄。

「あぁでも、君って結構リアリストみたいだから、実演しとこうか?」
青年が納刀する理由も解っていた。
畏怖を目の前にして初めて、勢い任せの行動に後悔した。
さながら砂糖に群がる黒蟻の様に、少年の全てを絶望が侵蝕してゆく。

ぼとり

少年の右拳と、二重に巻いたマフラーが、地面に転がった。

「結構硬いね、そのマフラー、だから上手く斬れなくって『痛かった』かも?」
「ひぃいいいっ?」
ずっと投げっぱなしだった会話のキャッチボール、漸く投げ返されたのは少年の悲鳴。

「居合の名人とかだと、まだ『くっついて』いるって誤認させちゃうらしいね。」
まだ『くっついて』いた。

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