香港国際学園〜外伝〜 98
「フィギュア○タクなりに業は磨いているようだね?」
嘲る青年の足元に12.7mm機銃弾が炸裂、軽やかなステップで回避した所、背後から唐竹割りに振り下ろされた大太刀は白刃片手取りの要領で封じる。
奇襲の主は先程刻んだファントム…強化仕様の二体とは言え、頭部を含む主要器官を切断されてまで動く程、タフな生体マシンではない筈。
「人形使いとでも呼んで欲しいのかい。」
青年は片手取り…つまり親指を切り刃から反らして四指で峰側から掴んだ太刀、左掌を添えて捕るなり逆手構えの一閃『人形使い』のカラクリを断つ。
背後から斬り掛からんとした所、得物を奪われた白兵チューン仕様が『糸が切れた』様に崩れ落ちる。
そして青年はたった今ブン捕った大太刀を無造作に放り出した。
地面に転がろうとしていただけに見えた大太刀が、一瞬何かに引っかかってから土塊を削る。
そして機動停止しながらも、再び青年を照準していた射撃チューン仕様の機銃は、やはり『糸が切れた』様に項垂れた。
「目端も利いてる…最初に砲撃の類を使えば、大太刀の間合に追い込めなかったもんな?」
軽口を叩く青年に、少年のコメカミが大きく引き吊り始めた。
「ただ…」
青年がつぶやく。
「族長の方が強かったよ?」
その瞬間、少年の頭の中が灼熱した。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
獣のような叫び声と共に服の下に隠していた八本のマフラーをすべて展開する。
「貴様が『ねぇさん』を語るなぁぁぁぁぁ!!」
八本の刃と化したマフラーを操り青年に迫る。
「あら、彼女、君の姉だったんだ。それは悪いことをしたね」
バックステップで一斉攻撃をよけた青年がニッと笑った。
「そうやって人を馬鹿にするなぁぁぁぁぁ!!」
髪を逆立て絶叫する少年。
ある意味不幸にも、二人の修羅場を確認していたパトロールの一団が居た。
「むむぅっ!?」
トヨタRVメガクルーザーが三台、特撮ヒーロー番組(の悪役)よろしく、荷台に立ち乗りしてまで人員を満載。
「行けェエエエ!」
「ヒィヤッハー!」
中世貴族の様な衣装に鉄仮面、日頃『つねつね団』を名乗る秘密結社学生であった。
そして手柄を譲ってなるものかと、小高い丘で名乗りを上げる、ターバンを巻いたヒーロー学生。
「つねつね団!手柄は哀の戦士!レイン『某』マンが頂く!」
北川才英率いるレジスタンスも一枚岩ではなく、学園の危機に便乗して名を上げようとする輩も少なくない。
双方の魂胆、ファントムの数が減るのを待っていたか、敵方と思しきマフラー使いの少年に向かってゆく…。
「空気読め、餓鬼共。」
外見上は少年の方が確実に年下だろう。
しかしその手際、八頭大蛇が如し一薙ぎで十数名を、肉骨粉と屑鉄が主原料のミックスジュースに変えた手際は天賦の才覚よりも、老練たる技術にも見えた。
「ひっどいなぁ?」
血煙の中で飄々とステップを踏む青年、嵐に舞う残骸の中で何か掴み取る。