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香港国際学園〜外伝〜
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜外伝〜 8


〜第一部完〜


〜第二部 橘理人編〜

時は千年以上遡り、天平勝宝九年(757年)早春……
時の権力者、大納言藤原仲麻呂の邸、田村第に一人の青年が捕らえられてきた。
仲麻呂を不敵な表情で睨み付ける青年は、二十代前半ぐらいであろう……銀色の髪と深海のような濃い青の瞳をした精悍な青年であった。

この時代では、渡来人と呼ばれる外国人は多かったし、彼らら朝廷から重用され、官人の中には異風な者もいる事は仲麻呂も知っていた。
しかし、目の前にいる青年はそれとはまた違う雰囲気を醸し出していた。
「しかし……しかしだ……熊野の衆人を使わなければ捕らえられぬとはな……」
仲麻呂は半ば感嘆した表情で青年に言う。
その青年は無言で、仲麻呂と背後に並ぶ烏面の武人を睨んでいた。
「まず、縄を解いてやれ……」
「はっ……しかし……」
仲麻呂の思わぬ言葉に近くの側近は眉をひそめる。彼もこの青年を捕らえるのに、どれだけ苦労したかを身を持って知らされた一人だったからだ。
「よい、もうこうなって一々暴れる程、童でもあるまい……それに、前の左大臣を祖父に、前の参議を伯父に持つ貴人じゃ……身の処し方ぐらい知っておろう……」

仲麻呂の言葉に部下達は渋々縄を解く。
縄を解かれた青年、橘理人は相変わらずの不敵な表情で仲麻呂を見ていた。

この青年、橘理人は前の左大臣橘朝臣諸兄の娘が母である。父については祖父も母も何も語らなかったし、母は理人の少年時代に死んで、祖父もつい先月に死んだばかりであったのでもう聞く術もなかった。
只、幼少の頃から自分が他人と違う事は理解出来ていたし、祖父や伯父の奈良麻呂は『竜の子』と言って可愛がってくれていた。
そして、唐帰りの学者、吉備真備から学問だけでなく武芸や方術を教わり、真備が筑紫に左遷されたのに付き従い、様々な術を極めていた。
つい先月、祖父の葬儀に京に帰ったばかり……そして政争で伯父が捕らえられ謀反の嫌疑がかけられてると知り、助ける為に大暴れして散々衛兵をてこずらせたが、烏面の武人の集団に捕らえられ……今に至る訳である。
既に奈良麻呂や関わった者は刑死となっていて、理人としても刑を受ける覚悟を決めていたが、仲麻呂邸に連れて来られ半ば拍子抜けしていた。
「大納言殿は……」
皮肉っぽい口調で理人が口をようやく開く。祖父や伯父もこの鼻持ちならない秀才を嫌っていたし、理人も嫌っている。

「俺の刑を大納言殿自ら行ってくれるのか?……光栄な事だな」
理人の皮肉に仲麻呂は苦笑しながら理人に近付く。部下の制止を手で制し、理人の前まで来ると、理人の前に立つ。
「惜しいな……惜しいと思わぬか、その力……つまらぬ理由で暴れるだけが力の使い方ではあるまいに」
「つまらぬ理由だと!……」
今にも襲いかからんばかりの理人に、仲麻呂は笑みを浮かべたままで言う。
「ああ、つまらぬ理由だな……この国の安寧に比べれば……我等の争い等つまらぬではないか」
仲麻呂の言葉に理人は仲麻呂を見返す。
「その力……この仲麻呂の為に使えと言っている訳ではない……大仏建立もこの国に降りかかる邪気を振り払う為であったが、まだ物足りなぬ……だからこそ、その力、この国の安寧の為に役立てほしいのだ」
仲麻呂の拘らない大きさに理人は感心しながら、仲麻呂を見返す。
その顔からは険しさは消えていた。
「面白いな……大納言殿に従うのは死んでも嫌だが、この国の為ならこの力、存分に役立てよう」
理人の言葉に仲麻呂は大きく頷き、満足げに笑ったのだ。

……理人が出て行った後、仲麻呂は邸の中から現れた青い髪の青年を溜息と共に見る。
「感謝する、仲麻呂殿」
「いや、良いのです……」
仲麻呂は青い髪の青年の正体や目的を聞かなかったが、予想はできる。
だから青年の頼みを快く引き受けたのだった。

その後仲麻呂は、理人を赦しただけでなく、葛城山の麓に邸を与え、自分の娘まで与えた。
この時より橘理人は国の安寧の為、闇に蠢く者を狩り……その任は子孫へと続いていったのだ。


それから、千三百年余り過ぎた………。

場所は日本から遥か遠くの中東、ハールーン王国。
この国では、数年に渡って、前王を殺害した大将軍ハジサドの独裁政府軍とその悪政に苦しむ民を救わんとする旧王国軍が争っていた。
一年前、一進一退の攻防の中、旧王国軍に軍儒組織『ミネルバ』が援助を申し入れた。旧王国軍はそれを受け入れ、ミネルバ傘下の傭兵部隊『ロイヤル・ハリビア』が均衡を打ち破り、旧王国軍の勝利は目前だった。
だが、突如ミネルバは援助を打ち切り、あろう事か、政府軍に援助を開始したのだ。
これにより、旧王国軍は窮地に追いやられた。

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