香港国際学園〜外伝〜 59
それにならう銃殺隊、新たな獲物とばかりに銃口を花丸に移す。
周りの自警団も馬鹿な奴…と肩をすくめた。
「交渉決裂か?」
交渉と呼べる会話だったのか知ったこっちゃないが…花丸の掌に紅い輝きが宿る。
「撃てぇいっ!!」
…たたたんっ!たたたんっ!…
…誰もが挽き肉と化す花丸の姿を想像しただろう。
硝煙と砂煙の立ち込める中…彼は立っていた。
「技名とか…叫ぶヒマもありゃしねぇ…。」
花丸の右手で唸るチェーンソー…粉々に砕けた銃弾が芝生に散らばっていた…慌てふためきながら弾倉を替える銃殺隊。
「遅いっ!」
具現化能力…多少の差こそあるが、あらゆる物理法則を無視して精神力から質量あるモノを産み出すチカラ。
そして能力Bランクともなれば、神に届かぬまでも人外な直感や身体能力を有する…。
ぎゅいんっ!これまた龍をモチーフにしたチェーンソー、荒らぶる龍が如く銃殺隊のライフルを噛み砕いてゆく…バネやらピンやら未使用の実弾やらが、金属と強化プラスチックのみじん切りと共に弾け飛ぶ。
「どーよ?」
チェーンソーを肩に担ぎ余裕の笑みを見せる花丸に驚愕しながらも予備の拳銃やナイフを構える銃殺隊。
周りを見張っていた自警団も武器を片手に迫ってくる。
彼らも多少の強化能力はあるだろう…が日頃人数に任せて低ランクの能力者をいたぶるしか能のない連中。
「どっせーい!!」
すぱこーん!ばちこーん!
流石に花丸もホイホイ生身の人間を切り刻む趣味はないのか、チェーンソーの横っ腹でシバき倒してゆく。
戦意を失った自警団はクモの子散らす様に逃げていった…。
悲しいかな、修羅の時代の風紀委員ほどの士気は持ち合わせていないのだ。
「残るはテメェだけだ!!」
ぴしぃ!と長剣型チェーンソーで委員長を指す。
「私とて…伊達に風紀委員長のバッヂを預かっている訳ではないのだよ…。」
実力は本物か…強化能力で一回り大きく見える程のプレッシャーを放つ。
正眼に構えたミスリル剣が彼の精神力に共鳴を起こす…見た目、三流悪役でも彼とて一流の…。
ぶぃいいいんっ!
「吹っ飛べぇっ!!」
ぼぐしゃあっ!!
「へぶーし!?」
気障なポーズで口上をタレていたモヤシ君…花丸の具現化バイクのブチかましでお星様に…(合掌)。
処刑台の方を振り向くと…今のドサクサの間に縄抜けしたのか…不良も娼婦も逃げ出していた…。
「なんでえ…義理も人情もねぇ奴らだ…んなこったから悪党共に…ぶちぶち。」
無理もない…白昼の大立ち回り…校長の腰巾着とは言え、警備員がおっつけ事情聴取に来るだろう。
自警団に目を付けられるだけに、彼等も大なり小なり後ろ暗い所があるのだ。
首を垂れる花丸に…倒れていた人影がヨロヨロと起き上がり、声を掛けた。
「ありがとう…助かったよ。」
傷だらけの躯で花丸に右手を差し出す。
「馬上…じゃなかった車上から失礼する…ってね?」
「君の名は?」
名を問いながら熱い握手を交すこの男…。