香港国際学園〜外伝〜 53
量子は気だるそうに煙草を吹かし、サラはうんうんと微笑み…羽音はぎゅむっ、と雪菜を抱き締めた。
「4vs4でセッティングしとくよぉ!!」
ジャ〇ーズ系を思わせる、TV受けしそうな笑顔…スーパー中学生的なイケメン…。
蒼い髪をさっと掻き上げ、着崩した制服を翻しポーズをキメる少年。
「アンタ…誰?」
少年が、斜め45゜に構え、カメラ目線で雪菜に向き直る…と。
「イケメン発見っ!!」
…なんかもう猫まっしぐらな羽音が跳び掛る!!
「こらっ!!」
雪菜がすかさず猫掴みで制止をかけ、ぶら下げる。
「この学園…色々物騒じゃない。」
…ひくひく…
聞いても無いことをペラペラと並べるイケメン君に、雪菜のコメカミが引き吊る。
拳を固めつつも必死に堪える。
「でも大丈夫!この鳳充規(オオトリミツキ)が付いていれば…。」
鳳と名乗ったイケメン君…劇団調できらりと羽音に微笑む…。
…ぷっち〜ん…
「間に合ってる。」
「え?」
怒りの無表情な感じで、雪菜が鳳の目前に迫る。
次の瞬間彼は、左から右へと頬を打ち抜く衝撃で派手にスッ飛んだ…。
「出直せ。」
「…ははっ…ゴメンねぇ…弱くってさぁ?」
雪菜にとって、虫酢が走る男パート3といった所か…。
鳳充規…後に自称、主人公ライバル的存在(な脇役)かつ、強力な能力者へと成長する…。
まさかそのキッカケが奴隷ズとは…。
…しくしく…何で?影汰君や天地君と比べて僕の出番ショボ過ぎない!?…
まぁ、美形キャラ(やっぱ巨根…羽音にはお宝レーダーでも備わってるのだろうか)にも関わらず女運が悪いのか、周りからの扱いの酷さは変わらないようで…。
パンチ一発(しかも強化能力無し)でダウンした鳳くんをポイして…雪菜は仲間と共に公園地区を後にした…。
十数分後、サラの部屋…
入った瞬間、ちょっとしたカルチャーショックに雪菜は立ち尽くし、サラの方を呆然と見る。
「アンタ…ナニ人?……」
何処からどー見ても東南アジア系の顔立ち、エキゾチックな美少女からは想像できない部屋構成…純和風、しかもここは江戸時代かと言う凝りようである。
「ナニおっ立ててるんデスか?…ハヤく入れテ下さいナ…」
何故か卑猥に聞こえる言葉で言うサラ…部屋に帰って早速着替えている。
長いストレートヘアを結い、浴衣に半纏…まさしくナニ人と言いたくなる格好である。
しかも、下着も脱いでいる凝り様である…
「サラ、それは男の子に言う言葉だよ…」
若干ズレたツッコミを入れつつ、量子は慣れた様子で火鉢の前に座る。
「何で和室なのさ…」
相変わらず玄関先で部屋をぐるりと見渡す雪菜…きっちりと窓には障子、入口も暖簾で仕切る徹底ぶり。
多少おかしいとは思うが、しかし寮をここまで改造してよいのかと違う疑問も沸く。