香港国際学園〜外伝〜 36
…他のメンバーもやはり不良グループというより…チャカだヤッパだグレン隊な雰囲気をかもし出し、トランプ賭博に興じている…。
別に雪菜をどうこうしよう、という気配はないが…動じない彼女もこの学園を理解したという所か。
子分Aが箱を開ける。
「コルトパイソン357マグナム2.5インチ銃身…反動はキツいかも知れんが…能力でカバーするか売店でパワーダウンしたタマを買え。
実弾20発、ホルスター、手入れ具…あと脇差はサービスだ。」
「あ…ああ。」
雪菜の提示は福沢さん数枚…22口径の小型銃程度かと…。
小口径なら海外旅行で撃った経験はあったが…。
…今…マグナムって言ったよね…え?…
軽く戸惑いながらも雪菜はなるべくクールに振る舞う。
「因みにコレは?」
床でバラけた暴発銃を爪先でつつく。
「1980円でぃ…俺が正規の武器屋で引き取った廃銃から再生した。ここらじゃ玩具の銃や刀を探す方が難しい位さ。」
…あぅ…ここは東南ア〇アとかアフ〇カのヤバい国ですか…
「かつての学園じゃ…生徒にホイホイ武器レンタル…軍隊まがいの風紀委員までいたらしいぜ…。」
…と疵顔の白い学ランが説明する。
「今じゃまともに武器申請しても…平気で半年は待たされっからよ。」
フルハウス…またヨージ兄ィの勝ちかよぉ?…という悲鳴が上がる。
「そのクセ校長は自分の身は自分で守れってなぁ…。」
雪菜は白学ランの尻ポケットのサマ札をチラ見しながら聞く。
「警備員は?」
「校長の番犬…あのハゲ自分の保身しか考えてねぇ。」
目にも止まらぬ速さで、白学ラン…ヨージ兄ィの手札にサマ札が加わる…。
「ハゲ?」
「リアルな白髪混じりだがよ…あいつヅラだぜ…あ…。」
ヨージ兄ィの袖口から、サマ札がこぼれた。
…このイカサマ野郎!!…
…あっ!兄貴分に手ェ…
…うるせーっ!!…
女親分…浅倉おろち姐さんはケータイをしまい、雪菜の顔を覗き込む。
「な…何さ!?」
「お前…筋が良さそうだ…ウチの組に来ないか?」
綾瀬雪菜…初日から組関係のスカウト。
「…人の下に付くのはゴメンさね…?」
「尻尾振る様な女じゃない…か、まぁいい。」
おろちは立ち去ろうとする雪菜に、屈託の無い笑顔を送る。
「…この地獄で楽しくやってくにゃ…一にも二にも『力』それと仲間…かな。」
派手な兄弟喧嘩に肩をすくめる。
雪菜はこの肝っ玉かぁちゃんと悪ガキ六匹…浅倉ファミリーに一言別れを告げアジトを後にした…。
浅倉おろち他六名…この約二年後、テスト段階の『私闘スタジアム』において、殺傷事件の濡衣を着せられ逮捕…刑務所まがいの収容所送りとなる…。
…へぇ〜浅倉さんて…この頃はイイ人だったんだ…
保健室へ向かう雪菜…拳銃は左脇、脇差は背中側…どちらも上着の内側に隠していた。
…廊下を往来する大抵の生徒は武器を携帯していたので大して問題ではないようだ。
「…お腹痛い…。」
そして漸く『保健室』は見付かった。