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香港国際学園〜外伝〜
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜外伝〜 28

そんな癖を懐かしむように父親の煎れた珈琲をすする
「そういえば昔、珈琲飲んで苦いって大騒ぎしたよな」
「ハハッ、そうだったな。それが息子と飲める日が来るとはな」
父親にとってはついこの間の出来事だったのだろうが刹那にそれを伝えることはなかった
「『闇烏』はどうした?」
少し目を細め呟く
「あぁ、役目を果たして消滅したよ」
鬼神刀闇烏、五神剣の融合を阻害するために作られたその刀は、過去の戦いでその役目を終え消滅していた
「そうか」
否定も肯定もなくただそう言い珈琲をすする


しばらくの静寂
「刹那、結婚はしたのか?」
「あぁ」
「相手はどんな人なんだ」
「気の強い女、だけど」
「放っておけないいい女・・・だろう?」
刹那にそう言い口元を緩める
「やはりお前も儂の子だな、儂が母さんに惚れた所も同じだ」
してやったりといった感じで笑う
「後、もうすぐ子供が産まれる」
刹那の呟きに父親が盛大に珈琲を吹き出した
「男か!?それとも女か!?」
「いや、まだ産まれてねぇよ」
だが刹那の言葉は父親に届いていない
「そうかー儂もとうとうお爺ちゃんか〜」
そんなことを言いながら天を仰ぐ父親
「いや、まだこの時代の俺はガキだから」
だが全く届かない
「男だったら『ハヤト』、女だったら『このは』かな。いやまてよ字画が・・・」
まだ見ぬ孫の名前を本気で考え出した父親
名前を書こうと筆などを取り出しはじめるのを刹那が必死に止める
「いいじゃないか。儂だって孫の名前くらい考えたいもん」
「もんじゃねぇよ・・・ったく」
父親の意外な面(出来れば見たくなかった)を見た刹那がため息をつきつつ座った
「ところで刹那」
「ん?なんだ親父」
なんだか気が抜けた刹那が答える
「恐らく、その時代儂は生きていないのだろう?」
そこには真剣な眼差しで刹那を見つめる父親の姿があった
「・・・」
沈黙は肯定だということはわかっていたが無理に明るく振る舞ってもこの父親には無意味だということはわかっていた
「儂とて先を見通せぬわけではないよ。先だって鈴木の長から書状が届いた。恐らくは罠だろう」
「わかっているならなぜ!!」
「・・・お前のためだ」
そう静かにいい放った
「お前は儂が死ぬことを防ごうとしておるのじゃろう?」
スッと立ち上がり障子を開ける
「だが儂が死ななければ未来は変わる。そうなれば今の『お前』という存在は消える」
「だからって・・・」
刹那が言い返そうとするのを拒むかのように続ける父
「今のお前は結婚もして子供も産まれる。そんな『息子』の幸せを壊してまで儂は息長らえたくはないよ」
「『親父』・・・」
「まったく・・・歳をとると説教臭くなってたまらんな、お前はこんな爺になるなよ。」
その言葉を聞くと同時に刹那の体が透け始めた
「・・・そろそろ時間らしい」
「そうか・・・」
一瞬言葉に詰まる刹那
「親父・・・」
「なんだ?刹那」
なんとか声を出す
「俺は『今』も『昔』も『幸せ』だったぜ」
そう言うと同時に刹那が消えた

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