香港国際学園〜外伝〜 25
第三部『刹那』編
「あ゙〜寒」
嫌になるくらいの寒空の下、病院の屋上でその男は呟いた
グラサンにジャンパーを着込み肩をすくめている男、名前は刹那、もとい『銀城刹那』
今日は自分の妻の見舞いに訪れたのだが・・・
「ったく、禁煙禁煙ってうるせぇなぁ」
四六時中タバコをふかしている彼にとって禁煙はかなりきびしい事なのである。
それに、もうすぐ我が子が産まれるとなると気恥ずかしく、なおさらジッとしてはいられないのだ。
「・・・父親、か。この俺が父親・・・ねぇ」
ふ〜・・・っとタバコの煙とともにため息をついた
「不安か?刹那」
「不安も不安・・・って理人!!何でお前が!?」
タバコ片手にあわてふためく刹那
「いやぁ俺んトコもこの病院になるみたいでさぁ、それでついてきたはいいけど暇で暇で・・・」
たはは・・・と笑う理人
闇夜に紛れ、そしてまた一人…。
「煙草の匂い…好ましくありませんわ…やめて戴けません事…?」
慇懃無礼な言葉遣いの女?今泉ジェロニモ。
「うるせぇ、他に何処で吸えってんだ?」
冗談半分に紫煙を吹っ掛けようとする刹那だったが…。
「何するかわかりませんことよ?」
舌打ちしながら、点けたばかりのマルボロを揉み消す刹那。
「大体…美容整形なんて他でもやってるだろうが?」
「あら…女が美しく在りたい…。」
「うるせぇオカマ。」
二人をまぁまぁと、宥める理人。
悲しげな表情で夜空を見上げる今泉。
「…母親…女の幸せ…ですか…。」
彼女?は元々『二人』の両性具有の少女だったのだが…闘いで深手を負い『使える』部分を継ぎ合わせ『一人』の人間として蘇った。しかし女性としての機能は損傷が激しく、出来上がった身体は男性そのもの、どうにか女性の身体に近付けようと試行錯誤しているのだ。
「『私たち』の分まで…奥様を幸せにして差し上げて…では御機嫌よう…。」
刹那は今泉が去ったのを確認した上で一服点ける。
「…業が深いっつーか…因果な奴…。」
刹那は金網に背を預け夜空を見上げる。
「俺達も似た様なモンだけどよ…。」
理人もまた同じくする。
「今更『良い子』になったところで…神様は許してくれない…とでも言いたいのか?」
「あぁ…少なくともアイツは許して貰えなかったんじゃねぇのかな…?」
オレが父親…刹那自ら口にした言葉が突き刺さる。