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香港国際学園〜外伝〜
官能リレー小説 - 学園物

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香港国際学園〜外伝〜 11

居士の消えた方向を凝視する理人は、仄かな煙草の香りに振り返る。
そこには壁にもたれかかるように屈強な男……30代後半ぐらいの髭面、濃い色のレイバンをした男は、振り返った理人を一瞥し紫煙をゆっくりと吐き出す。
「親父か……」
相手が見知った相手と知り緊張を解く理人。
この男、九頭竜はワイルド・ドラゴンの異名を持つ凄腕の傭兵である。
半ば傭兵の中で伝説化したこの男に、理人等3人は以前にコテンパにのされた事がある。
それまでは絶対的な能力の高さ故、見落としていた技術……本当のプロの傭兵の技術を見せ付けられ、理人達は彼からそれを学ぼうと必死になり、九頭自体もこだわりを見せず理人達に自分の技術を教えたのだ。
もう3人共、得意分野では九頭を超えていると思う……しかし、こうやって気配を感じさせず立つ九頭に、理人は改めて凄みを感じていた。

「あれは道化だ……構っても仕方ない……」
「道化……」
九頭の言葉を口で反芻する理人。
「そう、道化だ……空気と一緒、撃てんし斬れん」
「そう……か……」
九頭の言葉に興味を失ったように銃をしまう理人。
「親父……何か話があるのか?」

理人は九頭に聞く。
九頭は低い声で、しかしはっきりとこう言った。
「……ロイヤル・ハビリアの動きが活発化している」
九頭のその言葉に理人の眉がピクリと動く。

「先日、東の大隊が全滅したのは奴らの仕業だ」
九頭は再び煙草をくわえる。
「奴らは能力的には俺たちを遥かに劣る、一人を除いて」
「そうなのか?」
「所属していた俺が言うのだ。奴らの恐ろしさは統率されたチームワークにある。傭兵とは名ばかりの私兵共だ」
「一人除いてとは?」
「……ゴルドーだ。俺と同じプロジェクトの出身者、同じ狂戦士の名を持つ男だ」
そう言う理人の表情はあまり変わらない。ゴルドーが出て来なければ問題はない、という表情だ。
「ゴルドーは単独行動を好む。奴がいなければ、俺一人で、『ロイヤル・ハリビア』を全滅させる確率は60%はある」
「そうか?」
「全滅した大隊は遥か東の部隊だ。しばらくは奴らとの戦闘もないだろう」
そう言って理人は立ち上がり、自分のテントに足を向ける。
「寝るのか?」
「あぁ、適度の睡眠はするようにしている」
理人は振り返らず返して、テントに戻って行った。
「相変わらず、底が見えねぇと言うか、危ういと言うか……分からん奴だ」
九頭の吐いた紫煙は夜の空気に溶けていった。

翌朝………
「理人、仕事だ」
寝ている理人に剣護が仕事を持ってきた。
「………内容は?」
「いつも通りの殲滅だ……。こっから西に100q程の所に、向こうの前線基地を発見したんだと」
「わかった。五分で準備する。ヘリポートで待て」
「了解」


「と言うわけだ。明日には戻るだろう」
「相変わらず馬車馬の如く働いてるねぇ。疲れないの?」
理人は出撃前にリィナに報告するのが習慣になっていた。
何気無く、理人は報告しているが、リィナはそれを嬉しく思っていた。
初めて会った時から、彼は彼自身にも他人にも関心が無いように感じていたからだ。

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