普通の高校に女子限定クラスができた理由 74
剛と女子4人もようやく彼らに追いついた。
「お前ら早すぎ」
「ああ、悪い…つい興奮しちゃって」
「みんなこの作品見たから知ってるんじゃって…」
作品については熱く語る修司と寿明だが、いざ女子の前で他の話題になると口数が少なくなる。
そうして一同はちょっと話しにくい雰囲気になり、黙って歩く。
川原に差し掛かり、先頭の修司が立ち止まった。
「あの、ここで、主人公二人が、キスしたんだよな」
修司は、いっていいのか、悪いのか、迷いつつも一気に言った。
「あのシーンは夕暮れだったね」
「今の時間はちょっと違うけどな」
アニメの印象的な場面で使われただろう場所で、少し感慨にふける男女。
ちなみは男子を試すような感じで言った。
「ねぇ、私たちであのシーン、再現してみない?」
明らかに動揺する修司と寿明だったが、剛は
「う、うん」
と、戸惑いながらも一歩ちなみの方に歩み出た。
ちなみは、半分以上、冗談で流れるだろうと思っていたので剛の反応に一瞬固まる。しかし、まわりの愛華や茜は半分ちなみをからかうように
「ええと、確かこういう向きだったよね」
など言ってちなみを移動させ舞台を作り始めた。
そして気づいたときにはちなみの目の前に剛が立つ、という状況になる。
剛は剛でまさかこうなるとは思わなかったのだろう、顔が赤くなっていた。
きっと自分だって同じだ、ちなみはそう思った。
「じゃあお二人さん、もっと近づいて」
愛華が2人を煽る。
透子と茜は2人の背中を押す。
修司と寿明はそれを見守っている。