普通の高校に女子限定クラスができた理由 73
茜や透子たちのアニメ聖地を巡る班。
「この橋が、第五話で二人が言い争ったところだよね」
「…うん」
女子たちは、同じ班になった男子、特に安田修司と瀬戸寿明の予想以上のこのアニメに対するオタクぶりに戸惑っていた。
(うーん、思ってたよりも暑苦しいな)
(好きなのはわかるけど、もうちょっとセーブしてほしいね)
愛華とちなみはお互いを見やり、苦笑いする。
修司と寿明は彼女たちを置いて先へと進んでいこうとしていた。
「悪いね…あいつら好きなものの前になると周りの見えない奴らだから」
やれやれといった感じで彼女たちに謝るのはもう一人の男子、早瀬剛。
「私達も、聖地巡礼しようと思うくらいだから、もちろん好きじゃないわけじゃないんだけどね」
愛華が剛に言う。
剛は、一息ついて、多少小声で、愛華とちなみに言う。
「実は、僕も奴らについてきたけど、あのアニメ、一応知っているけど、そんなに詳しいわけじゃないんだ。西松さん、松本さん、少し、教えてくれない?」
ちなみはちょっと安堵したように表情を緩めた。
「高校生の男女グループの群像劇、っていうのは知ってるよね」
「うん」
「けっこう、男女両方の視点から丁寧に書かれているから、男女ともにファンが万遍なくいる、って言われている」
「わかるような気がする」
女子4人は剛に様々な説明をしながら先に行く2人の男子の後を追った。
「この作品、今度実写で映画化されるみたいなの」
「だから人気が高まってるわけか」
「実写化、賛否両論だけどね」
「それは作品の宿命だね」
次第に和気あいあいなムードが作られていく。
そのうちに一行は先に行った男子たちに追いつき、彼らも実写化の話に加わる。彼らは実写化にはどちらかというと否定的だったが、先程よりは会話の熱のギャップは少なかった。
「実写化なら、やはりここでロケするんだろうな」
「それは譲れないな」