普通の高校に女子限定クラスができた理由 60
「どんな風であれ、無理矢理は嫌だ」
透子が言う。
「そうだね。恋ちゃんが言ってた」
愛華は前の方の座席に座る恋の顔を見ながら言った。
「恋ちゃんってすごく心の強い人だと思う…無理矢理あんなことされて、1年高校に入るの遅れて…私だったら無理だよ」
恋は、班決めのときのアプリで改めて同じ班になる男子たちのプロフィールを見ていた。
“この、小坂くんっていう人は、きっと愛ちゃんといっぱい話すんだろうな…残りの人の誰かと今晩、なのかな…愛ちゃんの言うように紳士的だといいな…でも、まだ、そうなるって決まったわけじゃない…”
少なくとも、同じ学年の男子は自分を犯したような人間には見えない。もちろん、この学校に来てから相手をしたあの教師らしき男とも違う。
彼らは根っからの悪い人には思えない。ただ、思春期真っ盛りの男子だ。自分たちを見たらどう思うだろう……恋は思いを巡らせ、悩み続けた。
そうしているうちに彼女たちを乗せたバスは目的地にたどり着いた。
バスを降りたら、それぞれ決まっているグループを見つけ出して合流することになっている。
恋は、愛、奈津美とバスを降りた。
愛は、きょろきょろとあたりを見回す。
「あ、興津さんですか?」
しばらくの後、男子の三人組から声がかかった。
「はい…あなたがたが」
「はい、柘植光一です」
「はじめまして……ですよね。興津愛です」
愛は柔らかな笑顔で男子3人に頭を下げた。
両隣の恋と奈津美はまだ硬い表情だった。
「紺野恋です」
「柳井奈津美です…」
愛に続いて2人も挨拶した。
(見た感じ普通の男の子だけど…どんな人たちなんだろう)