普通の高校に女子限定クラスができた理由 59
「うーん、まあ、先入観を持つのは良くないと思う。まずは、普通に話してみようぜ」
「そうだな」
光一の言葉に直樹はそう答えた。礼は、引き続きもやもやした感覚を持ち続けた。
クラスごとのバス。8組は、亜優とか智里とか桃子とかの運動部などのメンバーは普通に盛り上がっていたがクラスの半分くらいの人はやや緊張気味で言葉少なに座っていた。
バスは高速道路に入り、淡々と渋滞につかまることもなく順調に走り続けていた。
後方窓際に座る千葉透子は、ずっと窓の外の景色を眺めていた。
その隣に座る涌井茜はスマホを操作しながら透子の表情を気にしている。
「なんか、モヤモヤする」
「……まあね。もし、そうなったときは仕方ないと思うよ。いずれはしないといけないことだし」
「でもぉ、あの男子たち、確かに、そこまでキモヲタ、って感じではなかったけどさあ」
茜と透子は、今日班を組む、同じアニメが好きな男子たちのことを思い出していた。
「女子は二次元しか知らない、って感じだったよね…まあ、でもそれは私達も一緒だからあんまり言えないよね」
「もしかしたら、この合宿中に何かあるかもね、例えば彼らと」
前の座席から身を乗り出して話しかけてくる愛華。
「センセが言ってたこと?」
「そう」
愛華の隣のちなみは耳にイヤホンをつけて音楽を聴いていた。
「実は持ってきたのよ、アレ。もしヤるときになって彼らがつけてくれるかはわからないけど…」
そのパッケージを見て透子はちょっと眉間にしわを寄せた。
茜は、それを凝視し、言った。
「それって、コン…」
「しっ」
透子は茜がその先を言わないように注意を促した。しかしまわりの2、3人が愛華の手の方を見た。
「愛華は、そうなって、ほしいの?あんな男たちと」
茜は愛華に顔を近づけて小声で言った。
「うーん、オッサンに、一方的に、っていうよりは、まだ、いいかなあ、って」