普通の高校に女子限定クラスができた理由 6
「確かにそうだな」
「前から気になってたんだ、あのクラス」
男子生徒からは直樹に同調する声が次々上がる。
「私たちも気にならないと言えば嘘になる…けど、うちのクラスだけがそんなことしていいのかな、って感じもする」
数少ない女子の中でそう言うのは中島梨沙。
その時、教室の扉が開いた。
使っていい30分が過ぎ、沼尻先生が来たのだが、笑顔はなく、顔色悪く、うつむいていた。
「すみません、初めての、授業で、とっても申し訳ないんだけど、このあとも、よかったら時間使っててください…」
沼尻先生はそう言って去っていった。
沼尻先生の授業を楽しみにしていた男子生徒はちょっと落胆したが、今は目の前の話し合いの方が興味ある生徒の方が多かった。
「あの、思いついたんだけど…」
前に出ていた二人のうち一人、男子の旅行委員 柘植光一がぽつりと言った。
「班別行動の班を、一日だけクラスの枠を越えて作る。1組から8組まで必ず一人ずつ、男女もなるべく四人ずつになるようにする」
直樹は心の中で“よっしゃー!”と叫んだ。
一人の人かもだが、8組の子と、行く前から、どこに行こうか、とか打ち合わせで近づけそうな案だ。
授業が終わる頃には大体の結論が出た。
「いい話し合いができたんじゃないかな。あとは今日決まった資料を8組に回覧するから、それまで待ってて貰おう」
奥村がそう言って話をまとめた。
「しかし8組の先生、なんか元気なかったな」
「うん…ちょっと残念だった」
沼尻先生が早退した、という知らせが8組にもたらされた。
「えー」
「朝元気そうだったのに」
生徒たちは驚きの声を上げる。
「ねー、レンちゃん」
「何?奈津美?」
「先生、こーちょー先生と、あっちの方行くの、見たんだ」
「あっちの方…」
恋は奈津美が指す方向を見た。
その方向は、使われている部屋はない薄暗い区画しかないはずだった。
7組でまとめた、宿泊研修の一日目の班を1組から8組まで入れて組む話は、光一が1組から6組の男子の旅行委員に手早く根回しして、1組から7組の旅行委員が8組の委員を説得するような形になり、やや気が進まなかった彼女も断りきれず、受け入れた。
しかし、7組で案を出しきれなかった項目がある。班の決め方だ。「くじ引きで決めたら絶対班は崩壊する」とくじ引き以外にしようと提案したのだが、具体的な手段の案がなかったのだ。
「うーん、どうすればいいんだろう」
「なんか男子の下心見え見えって感じ」
「突っぱねちゃえば良かったのに…」
「まあ、向こうがそれで一致しちゃったからね…」
悩む恋に愛華とちなみが言う。
「宿泊の部屋は男女別なんだよね?だったらある程度グループを組んで…」
そこに助け船を出したのは8組クラス副委員長の桐原萌だ。