普通の高校に女子限定クラスができた理由 5
「生徒会役員って、初日のセレモニーの挨拶とか女子だったような」
「一応、男の部員もいるらしい」
「そうか…でもなぁ」
「行ってみないとわからないだろ」
ふと礼は廊下に視線を移した。
噂をすれば…というべきか、8組の担任の泉と女子生徒がひとり、礼たちの担任の教師…奥村雅人と何やら話をしていた。
奥村先生が教室に戻ってから直樹が聞いた。
「先生、沼尻先生と、どんな話だったのですか?」
先生の紹介はセレモニーのときにあったので他クラスの生徒も名前は知っている。
「うん、まず一つは、明日の英語の授業、沼尻先生の都合で最初の30分ほどいないので使ってくれないか、という話だ」
「えっ、沼尻先生、うち担当なんですか?」
「そうだ」
二人の顔が目に見えて明るくなった。
「その空き時間は、旅行委員から要望が出ていた、宿泊研修についての話し合いに、使おうと思う」
「宿泊合宿ですか」
「ああ、みんなにはまだ話してなかったかな、5月の終わりに3日間、新入生に行うプログラムなんだ。もちろん8組の子たちも参加する…そこで交流会とかもできればいいかと思っているが…」
礼と直樹の表情がさらに明るくなる。
「まあそれも沼尻先生とかと話してみないとな」
奥村の言葉に礼と直樹は淡い期待を寄せるのであった。
…翌日
予定変更となった英語の授業。
7組の教室では宿泊合宿の説明や話し合いが行われていた。
そのころ、本来授業を行うはずだった教師・沼尻泉はどこにいるのか。
それは……
「ふぅ、うぅ……あ、うあっ!」
「あの生意気な問題児が、教師として戻ってくるなんて思わなかったな」
そうとは知らぬ7組では、宿泊研修で8組と交流を呼びかけよう、という話に対し、副委員長の野原千明が
「このクラスの男子が女子クラスと交流したい、のように見えてしまう。私達7組女子の立場はどうなるのか?」のような問いかけをしていた。
発案した奥村先生は、クラスの議論を見守るような姿勢を取った。
「8組は、知っての通り場所は離れていて、部活にもあまり入っていないような、同じ緑台の仲間なのに謎の多いクラスです。そういうクラスにどんな人がいるかとか、知ってみたいと思いませんか?」
せっかくの希望の灯を消されないよう、直樹は力説した。