普通の高校に女子限定クラスができた理由 4
直樹が言いながら部活動紹介のパンフレットのページをめくる。
緑台はもともと運動部より文化部の方が盛んな学校である。
礼も一緒になって探す。
「明らかに女子向けの部活に入るのもなぁ…よく考えようぜ」
「ああ」
「茶道部とか、家庭科研究同好会とかは、多分却下だな」
「ああ、居場所がある気がしない」
「吹奏楽部…うーん、県大会常連とは敷居が高いな」
「気軽に入れるところがいいよな」
休憩時間は終わり、生徒会長…男子だった…の挨拶のあと、運動部から順次説明が始まっていく。
礼と直樹は小声で部活探しを続ける。
「SF&ミステリー研究部…」
「オタクが集まってそうだ」
「最近は女子のオタクだって多い」
「多少目指す路線とは違うような気がするが…」
彼らは議論を続ける。部活説明も文化系に入っていくが、退屈な説明が多く、周りの新入生の多くがうつらうつらしてきた。
「オッケーベイビー!」
新入生の目が一斉にステージに注がれた。
背の高いかっこいい系の女性がステージの真ん中の一番前に走り出てきた。
「演劇部だ!」
彼女は続いて登場した四人とともに、マイクを使わず、肉声で、部活の内容を体現するかのような部活紹介をし、最後の方でその五人の中の唯一の男子は「男子部員もいるよ!」とアピールした。
「演劇部、ちょっとポイント高いかもしれないな」
「うーん…どうだろうな」
「別に役者だけを募集してるわけじゃないだろ。脚本を書く人間もいるし、裏方だって重要だしな」
「まあ…そうだな」
部活紹介が終わり、一連のセレモニーはすべて終了となる。
新入生たちは自分たちの教室に戻ることになる。
「ちょっと興味あるとこをリストアップするから今週でも見学に行こうぜ」
「ああ」
一方で女子限定の8組はというと。
「部活ねぇ…」
「あまり興味ない方だったりする?」
「うーん、ちょっと、ね」
ため息をつく恋に声をかけるのは松本ちなみ。
「松本さん…は、何か興味あった?」
「ん、ちなみでいいよ……まあ、これでも私、アニメもマンガも大好きなオタクだけどね、あんまりみんなでワイワイやるのはちょっと違うかなーって思うんだよね」
「ま、強制的に入らなきゃいけないわけじゃないからいいんじゃないの」
ちなみの隣にいた西松愛華がそう言う。
「参考になったよ、ありがと」
紺野恋…彼女は周りより1つ年上の「新入生」だったりする。
「うーん、8組の子、いないなあ」
「やっぱり孤高の存在、っていう感じなのかなあ」
あれから一週間。直樹と礼はリストアップしたいくつかの部活を手分けして回ってみたが、その範囲では8組の生徒に会うことはできなかった。
「その中での、俺の推しは、文芸部」
「文芸部?直樹、お前のキャラ文芸って感じじゃないな」
「実は、あそこ結構生徒会本部役員とかその辺りの人たちがいて、校内の噂を聞くなら一番良さそうなんだ」