普通の高校に女子限定クラスができた理由 36
余裕を持ったまま前のめりになる愛華。
正面で同じ格好をする泉を眺める。
さっき感じた不思議な音…それがさらにはっきり聞こえた。
「ねぇ」
「なんか…変だよね」
愛華の隣で開脚運動を行っていた千葉透子と川瀬凛音が小声で話していた。
横から長身の男の人影が近づいてくる。
「沼尻先生って、体育じゃないですよね」
「奥村先生、どうしてここに?」
「授業ない時間だったから、ちょっと、校庭を歩いていたら、沼尻先生と8組のみんながいたからちょっと寄ってみました…なんの音ですか?」
「なんでも、ないです」
泉はあくまで平静を装った……しかし。
ブゥーン
周囲が静まり返った中で、はっきりとその不思議な音が響いた。
それは泉の方から。
「沼尻先生」
「大丈夫、大丈夫ですから…っ」
「君たちはしばらくそのままで」
奥村が泉の腕を引いて倉庫の裏に消えた。
8組の生徒たちはそれを唖然として見ているだけだった。
奥村は、目の前の事態を解釈しようと努めた。
「沼尻先生、誰かに、脅されているんですか?」
「あの、どうか、お気になさらずに」
「いえ、何でも、言ってください」
泉の息はより荒くなっていく。
頑なに拒み続ける泉。奥村が不審に思った時、また
ブゥーン
例の音。
奥村は、今度はその音の出所を突き止めた。
「まさか…!沼尻先生、あなたは一体…」
「本当に、何もないんです…っうっ!!」
泉の身体がビクン、と震えた。