普通の高校に女子限定クラスができた理由 3
8組でも同様のオリエンテーションが行われていた。
先ほどの美少女のような女性教師が、教壇の前に立ち31人の女子生徒の前で話をする。
「沼尻泉です。みんなの担任として、一年間よろしくね」
この教室内は他とはおそらく違う、少しくだけた雰囲気だった。
「ところで先生、何歳ですかっ」
廊下側に近い一番前の席から声が上がる。
「松本さん、女の子に歳を聞くのはタブーだよ」
「私らだって女の子です、それに先生絶対若いでしょ」
「ふふふ……まあね。実はね、私も先生としては一年生なんだ」
泉先生は改めて生徒一人一人の目を見て言った。
「私は、4年前、ここ緑台高校を卒業して、去年ここに教育実習に来て、そして、運良く、希望かなって、ここに戻ってきたんだ」
「ええっ!先輩なんですか」
そう言った人はそれと同時に背筋を伸ばした。
「うん、まあ、そうなんだけど、ときには先生としてビシッと言うことは、あるけど、でも、みんなと一番近い歳の先生です。友達と思って、仲良くしてね」
どこからともなく拍手が起こり、クラス中に拡がった。
「先生」
奈津美が手を挙げた。
「はい」
「こういう女子クラスって、昔からあったのですか?」
「ううん。私がいたときは、なかった。教育実習来たときも、なかった。今年から、できたみたい」
「そうなんですね。なんか不思議だと思って」
ちなみが腕組みしてちょっと考え込む。
「私もどうしてこういうクラスができたのかはわからないんだ…いずれわかってくるのかもしれないね」
泉がそう答えると、教室にあるスピーカーが新入生歓迎セレモニー…いわゆる入学式のようなものを行う、と告げた。
8組の面々は五十音順の名簿順に並んでしばし待機し、泉がどこからか指示を受け取ると同時に体育館へ。
体育館はごく一般的な、普通の入学式の雰囲気だ。
ただひとつ違うといえば、8組の生徒の一角だけが女子だけということ。
他のクラスは男女混成クラスなので、余計に目立つ。
8組の生徒が入場したときには館内がざわついた。
「…なんだろう、これ」
「気にしたって始まらないよ。がんばがんば」
明るい声で恋を元気付けるのは隣に座る来栖柚月。
そんな彼女を見て、恋も笑顔を作る。
その入学式。
校長から8組は『試験的に作られた限定クラス』という説明があった。
それ以外には詳しい話はされず、本当の意図は明らかにはされなかった。
そうしてセレモニーの学校主催部分が終わり、休憩を挟んで生徒会主催部分、実質的に部活紹介が多くを占める、に移っていく。新入生たちにはすでに部活紹介が載った冊子が配られていた。
休憩時間中。
「なあ、8組気になる。どっか部活に入って8組の子と仲良くなろうぜ」
言われた礼は部活紹介の冊子をめくっていた。
「どこがいいかな?まず運動部はダメだ。男女別々の活動だろうし、マネージャーとか考えても確率低すぎる…ていうか俺たちに向いてそうなスポーツなんてない」
「たしかにな」