普通の高校に女子限定クラスができた理由 171
ゆっくり、意識が遠のいていく感じ。
それでも綾音は心から良かった、と思える気持ちでいっぱいだった。
「綾音」
しばらく眠っていた感覚から、目が覚める。
傍らには杏南がいた。
杏南もまた、スッキリしたような表情だった。
杏南も、その隣にいる巧も、タオル一つまとっていなかった。
亜美羽の方は、変わらずだった。綾音が眠っていたと感じた時間はほんの少しだったかもしれない。基弘も、隣でまだ裸だった。
「杏南…広瀬君と、どうだった?」
「うん…とっても、よかったよ。綾音も、やっぱり、広瀬君と…ヤる?」
「うーん、ちょっと興味あるけど、今は疲れちゃったしまた今度でいいかな…」
「うん、チャンスはまだあると思うよ」
そう言って、また少し眠りにつく綾音。
やがてすべての部屋が就寝の時間を迎え、合宿の夜は更けていく。
そして、異性を迎え入れた部屋も、そうでなく夜を過ごした部屋も、同じように朝を迎えた。
最後の朝、浴室は男女分かれて、汗や、その他の液を、流した。
朝食を取って、クラスごとのバスで帰途につく。
「ねぇ、みんな、ヤったの?」
8組のバス。普段からやや空気を読まない発言をする野々宮みゆが、バス全体に向かってそう言った。
「そう言う、みゆちゃんは、どうしてたの?」
静まり返る中、奈津美が、淡々と、応じた。
みゆが周りのシーンとした空気を一旦確認した後、
「うちの班はヤった」
また静まり返る。
「決して悪い思い出じゃなかったからさ」
「うん、それはわかる」
近くに座っていたエリカが答える。
「それだったらいいんじゃないかな。私たちだってそうだったよ。まああんまり大声で言うことじゃないけど」
奈津美は窓の外を見ながら言う。