普通の高校に女子限定クラスができた理由 18
普通の県立高校なのでプールは屋外のものしかなく、今の時期はたまに近くの清掃工場併設の市民プールで練習する。
「ねえ、智里、歓迎会って行く?」
桃子は泳ぐ順番を待っている間に智里に聞いた。
「うん。桃子、行かないの?」
「ううん…智里が行くなら行こうかなって…」
「そう?じゃあ行こう。そんなに部員が多くないのに歓迎会してくれるって、ちょっと嬉しいじゃない」
「まあね」
2人も軽く泳いで、この日の練習は早めに切り上げられた。
桃子と智里は、2年生の戸田日菜子について行く形で、その歓迎会の会場に向かう。
日菜子は後輩の面倒見もよく慕う人も多い、水泳部のいいお姉さん的な存在である。
入部したばかりの桃子と智里もすぐに高校の部活に慣れることが出来たのも日菜子のおかげと言っても良かった。
「あれっ」
案内された先は普通のカラオケボックス。
「ここ、ですか?」
「そうだよ」
部屋の中は、三人が到着して10人くらいになった。
「ここは、食べ物飲み物持ち込み可だからけっこう安くいられるんだよ」
そう話しているうちに、私服に着替えた先輩二人がスーパーの袋を持って入ってきた。
「店に行くと、これは無理だからネ」
日菜子はそのビニールから、缶ビールをちらりと見せた。
「うわあ、いいんですかあ」
「誰も見てなければ。ここには顧問も来ないしね」
日菜子は缶ビールのプルタブを開け、グラスに注ぐ。
「先輩も後輩も分け隔てなく、楽しくやろう」
「はい」
智里が日菜子からグラスを受け取る。
「おっ、期待の1年生女子も来たな」
部屋のドアを開け、男子水泳部の部長、岩上がやってきた。