普通の高校に女子限定クラスができた理由 16
愛は、その一言にちょっとドキッとした。
「先生自身は、どうだったのですか?」
「うーん、そのときは、特に何も無かったかな。ふつうに楽しく行ってきた」
「そのときは、ってことは、他のときに何かあったんですか?」
「先生の高校時代の話、もっと聞かせてください」
さらに何人かの生徒が、半分は授業をつぶそうと企んて質問に参加してきた。
「それは、また違う時間に話そうかな。今からは授業だしね」
泉はパンパンと手を叩いて授業の準備をする。
それからしばらくは話が脱線することなく時間が過ぎていく。
残り15分くらいのところで授業は一区切りついて、ちなみが泉にさっきの話が聞きたい、と切り出す。
「うーん、私は至って普通だけど…?そんなみんなに話せることなんてなぁ…」
恋は、この話のはじめのときから泉と目を合わせられなかった。この前聞いた、高校時代の、よくない出来事が先生の頭の中に蘇っているのではないかと考えて。
恋は、空気を壊さず、かつ先生が少しでも楽になるように、と考えて、思い切って口を開いた。
「先生、楽しい思い出、聞かせてください」
「うーん、楽しいことね」
泉は発言の主が恋であることに気づいて、彼女の方に「気にしなくていいよ」というように視線を送った。
「ここはそこまで校則とか厳しいわけじゃないから、学校帰りにカラオケ行ったり、友達とよく遊んだりしてたなぁ」
「へぇ、意外です」
「センセって真面目な人だと思ってた」
「先生」
萌が手を挙げた。
「友達同士、って、女子だけでしたか?男女一緒でしたか?…あの、よく、ラノベとか、マンガとか、アニメとか、高校生で男女一緒のグループで遊んでるの、あるじゃないですか。でも、少なくとも、中学では、全然そんなことなかったです」
周りの何人かが頷いた。
「高校では、本当に、あったんですか、そういうこと」