普通の高校に女子限定クラスができた理由 146
「なあ」
そことは離れた場所で、遼は、同じ班の男子に声を落として話し始めた。その班には巧もいる。
「望月さんの…あの、裸…見たんだ…」
「えっ??」
「裸って、その、ほんとに、何も着ていない、ってこと??」
巧は表面上反応せずスマホを操作している。
「ああ…何も着てない…」
「どうしてそういう状況になったんだ?」
「ちょっと汗かいて、シャワー浴びたいなと思って使わせてもらおうと思って…そうしたら望月さんがシャワー浴びてた。全然気づかなかったんだ」
「で、どうだった?」
そう聞いたのは遼と同じ班のひとり、田畑勝。
「どうって」
「望月さんの……裸だよ」
「そうだな…なんて言うか、すごく綺麗だった」
彼らはしばらく沈黙した。
「なあ、お前、結局その後シャワー浴びたんだろ」
もう一人、同じ班の男子、駒井基宏が沈黙を破った。
「おお、何で分かった?」
「髪濡れてるから分かる…ということは、結局望月さんに居るのバレたんじゃないか?」
「ああ、まあそうだ」
「叫ばれたり、ひっぱたかれたりしなかったのか?」
遼はちょっと考えてから応えた。
「そういうのは無かった。最初、上だけ隠した。あとの方では、あんまり気にしてなかったみたいだ」
遼は実際にあったことを正直に告げる。
「ふぅん」
「運が良かったのかな」
「まあ、そうかもしれんが」
勝と基弘に言われ、また考えをめぐらす遼。
「お前に気があるんじゃないか?」
「まさか…そんなことが」
巧が言うと勝は笑って否定しようとする。
「まあ、それはいくつか思った仮説の一つ」
周りの反応を見た上で、巧は真面目に続けた。
「8組がちょっと特殊、っていう話もあるし、望月さんがまわりからちょっと浮いているようにも見える」
巧が、他の三人に少し寄るようにという動作をした。
そして、声を潜めて言った。
「ちょっと、作戦を考えてみよう」