普通の高校に女子限定クラスができた理由 144
「あ、あと」
巧は千明の背に向かって言った。
「男の先生が8組の女子を風呂に呼んだような話もあるから、一概に8組女子を責められないみたいだよ」
「えっ」
千明は振り返ったが、巧は千明が来る前にやっていたスマホの操作を再開していた。
同じ頃、8組女子のひとり、望月亜美羽は夕食前に部屋の浴室でシャワーを浴びていた。
真っ白な美しい肌に弾かれる水滴。
クラスの中でも一番の美少女だが、物静かで滅多に発言することはなく同級生でも素顔を知る者は少ない。
そんな亜美羽がシャワーを浴びているところに、それを知らない同じ班の男子、影山遼が中に入ろうとしていた。
遼は扉をたたいたが、亜美羽以外の部屋メンバーはたまたま今はいず、亜美羽は水音で聞こえないので返事がない。
遼たちの班は昨日の晩にこの部屋でトランプをしてそれ以上のことは何もなかった。そういう実績があるから遼はこの部屋に入ることに特に躊躇は感じず、ドアノブを回した。
鍵がかかっていれば誰もいない、または、着替え中などなのだろうから出直そうと思った。しかし、亜美羽は、他の女子が戻ってくることを考えて鍵は掛けていなかった。
ドアノブが回ったので遼は遠慮なく扉を開いた。
当然誰もいないだろうと堂々と中に入ろうとする遼。
しかし、そこにはすでに先客、しかも女子の姿が。
「えっ」
思わず声が上がってしまう。
そんな遼の驚きの声に亜美羽も気づいて振り向く。
「!?」
咄嗟に胸を両手と腕で隠し警戒する亜美羽。
亜美羽は大声を上げたい衝動に駆られた。しかし、もしそうしたらきっと何人もの人が駆けつけてよりややこしい状況になるだろう、と、一瞬で計算して思いとどまった。
「影山君、どうしたの?」
亜美羽は胸を隠したまま…つまり、下半身は隠していない状態で、遼に尋ねた。
遼は、必死に目をそらしている。
「えっと、ちょっときのう忘れ物して」