普通の高校に女子限定クラスができた理由 135
「困ったときはお互い様だよ」
恋はそっけなくそう言う。が、次には
「どうせなら一緒に食べない?」
「い、いいのか」
「せっかく手伝ったんだし、ね。愛ちゃんもいいでしょ?」
「もちろん」
2つの班で向かい合うように座る。
昨晩体を交わした同士、愛と礼、奈津美と直樹は親しく話すのだが、恋はやや下を向いて、黙っている。
光一は、今恋を目の前にして、昨晩の恋との関係が頭の中でぐるぐる回り始めている。そのため目の前の恋になんと言っていいかわからず、やはり黙った。
成り行きでそうなった……といえばそうなのだが、お互い意識してしまう事はたくさんあった。
周囲がそれを不思議に感じることもなかった。
「紺野さん」
「え、あ、ああ、椎葉さん…?」
隣のテーブルにいた由梨花が恋に声を掛けてきた。
「そこ、夜一緒に過ごした組なの?」
恋は戸惑った。由梨花は恋達とは普段あまり話す方ではなかった。
「えっ、それが、どうしたの?椎葉さんは昨日の夜、どうしてたの?」
「別に……私は、何もなかったよ」
由梨花はそう言ってカレーを一口食べて嘆息する。
自身の班は控えめな主張しない子の集まりだ。いや、控えめ過ぎるのかもしれない。こうした大人数での集まりなら紛れるのだが、ひとつの班だけだと恐ろしいほど会話がない。
それが、あの浴室の一件で変わるのかと思ったが、それほどでもなかった。
由梨花は、確かに夜、何もしなかった。
できなかった、というべきなのかもしれない、とも思った。