普通の高校に女子限定クラスができた理由 132
恋は続ける。
「愛ちゃんは、どうだったの」
ここで声を落として、
「はじめての、経験は」
愛は、特に動揺することもなく応える。
「うーん、けっこう、優しくしてもらえて…多分、良かったんだと、思う…レンちゃんはどうだったの?」
「私は…」
恋は言おうとしたところで、返す言葉に困った。
愛は自分の過去については、全く知らない。かといって正直に話したら相当な心配をされるだろう。少なくとも今の自分は引きずったりはしていないから…
「愛ちゃんが良かったならそれでいいかな」
「えっと…」
愛がもう一度尋ねようとしたときには、バスは目的地に到着していた。
「こんなに近いなら歩きでいいのに」
「なんか、去年の台風で道が崩れちゃったんだって」
恋たちはそんなことを言いながらバスを降りて体育館のようなところに入る。
全体での研修なので、7組のメンバーが隣にいる
用意された椅子に座り、壇上に上がったスーツ姿の紳士の話を聞く。
(うん、眠いな)
智里は周りにバレないよう口元を抑え欠伸する。
彼女たちはある意味一番盛り上がった男女のグループでありその勢いは夜中まで続いたほどであった。
やがて館内が暗くなり、スライドショーが流れる。
生徒の後ろで見張る奥村も眠気を隠せない。
「ん…あ…知宏……あ」
うとうとしていた智里は、隣の桃子の肩にぶつかって目を覚ました。
「なんか夢見てた?」
桃子が小声で、ニヤニヤして問いかける。
「えっ?」
「今、知宏、って言った」
「ほんと?」