普通の高校に女子限定クラスができた理由 14
礼は自らのスマホ内の画像を繰った。
「この画像が役に立ちそうな日が来るなんて…」
「何だ?お前、かき餅でも作ったのか?」
「これでもクッキーなんだよ」
その画像は、エプロンに身を包んだ礼が、ミトンをつけてオーブンから取り出したばかりの(彼いわく)クッキーを示しているところだった。
「クッキー作るなんて、お前意外と女子力あるな」
「うーん、姉貴がクッキー作って『女子力高いでしょ』とか自慢するから『僕だって作れる!』って言って勢いで作っただけなんだけど…まあ、この班にアピールするには、使えるかなあ、と思って」
「いいんじゃないか?それ、さっきの班のところに画像添付して送ればいい。お菓子作りする男って女子から見たらポイント高いと思う」
「そうかな…まあやってみるか」
礼は直樹に背中を押される感じで恋たちの班に向けてメッセージを送る。
「あれ、なんか来てる」
それから少し経って、愛がそのメッセージが来たのに気付く。
いくつかのメッセージが届いていた。しかし、大半は、コピペかと思うような、いくつもの班に同じように送っているんだろうな、とわかるような特徴のないメッセージだった。
その中で、愛は礼の写真を見た。
“何この人。ちょっとかわいいかも”
テンプレで一括送信の他の班とは違い、礼が送ったのは自分で打ち込んだ文章であり、送信する前に直樹に見せた自作のスイーツの写真をのっけたある意味力作である。
「愛ちゃん、なんか来たの?」
恋が隣から覗き込んでくる。
「いくつかの班からメッセージが来たよ」
「そ、そう…」
「ひとつ気になる人がいてね、きっといい人だと思うんだ」
愛は恋にその画面を見せた。
恋はコメントに悩んだ。文章や写真ですぐに相手の男を信用する気にはなれない。しかし、ストレートにそういうことを言うのが適切な空気とも思えなかった。
「どうしたのー?」
奈津美が近づいてきた。