普通の高校に女子限定クラスができた理由 12
……
「紺野さん、紺野さん…」
呼びかける声に、恋は気づいた。恋は、冷たい廊下の上に横たえられていた。
「先生…」
泉はもう服を着ていた。あの男たちの気配は、もう無かった。
「紺野さん、つらかったでしょう…」
辛い…?
あの時に受けた痛みに比べたら、全然。
それに、先生の方がずっとずっと辛いことをされていたはずだ。
「大丈夫、です…」
恋はゆっくり身体を起こした。泉がそれを支えようとする。
「ごめんなさいね…クラスのみんなには、こんな風にはなってほしくなかった…」
「先生の方こそ、大丈夫なんですか…」
「見てたんだ、やっぱり…ううん、いいの。辛いわけじゃないの。私がここで生徒だったとき、その、男の人とのそういう関係、結構あったのバレてて…それをネタに、ときにこうして男の人の相手をすることに、なってるの…うん、ほんと、嫌なわけじゃないから」
泉は恋と目を合わせずそう話した。
たぶん、泉先生だって嫌なのかもしれない…恋はそう悟った。
OGである泉がこの学校に教師として採用されたのも何か裏がありそう…そう考えた恋だが、さすがに本人には聞けなかった。
翌日。
恋も泉も、何事もなかったかのように元気に振る舞っていた。
恋は、奈津美と愛と宿泊研修の班を組んで、愛が提案したスイーツの施設に行くことにした。
愛は、アプリで、私達はこの施設に行きたい、とアピールした。
「おお、8組の子も結構アプリに入力しているぞ」
その頃、直樹と礼はスマホを覗き込んでいた。