PiPi's World 投稿小説

もうじき
官能リレー小説 - 人妻/熟女

の最初へ
 7
 9
の最後へ

もうじき 9


滝まで行くと、民宿まで帰るのは夜になってしまうらしい。雨が上がり、巫女の恵美さんに来た道とは違う道を案内されて夕方に民宿に戻ってきた。
「巫女様、どうなさったのですか?」
「山でこの人と会ったので、迷わないように連れてきたのですよ」
女将の香織と巫女の恵美が話している。
そこに綾香と智美もやってきて頭を下げる。
「綾香さんが連れてきた人でしたか」
智美は巫女の恵美さんに、とてもなついているようだ。
巫女の恵美さんがこちらを見てくすりと笑う。
「巫女様も夜の山道は危ないですから、どうぞお泊まり下さい」
「そうさせていただきましょう」
温泉は山で修行に来た修険者たちが疲れを癒す御祓の場だったそうである。
それを露天風呂に改築して民宿を始めたらしい。
「老舗の宿なんですね」
「隠れた名湯。でも、電気は通ってるけど、まわりにコンビニもないぐらいだから」
智美が苦笑して言った。
望月香織と望月智美。
愛人の綾香。
巫女の村木恵美。
この四人がそろっていると華やかで、自分は場違いな気すらしてくる。男性が一人に美人が四人。さらに、綾香は愛人で、巫女の恵美に昼間に抜いてもらったばかりなので、気まずさもある。
この日の夕食は綾香と二人では寂しいということや、めずらしく巫女様が山から出てきたこともあり、五人とはいえ全員でとることになった。
「そうですか。先生がどんな作品を書かれているのか読んでみたいですね」
「いやぁ、たいしたものは……」
巫女の恵美に言われてごまかそうと口ごもる。
「ここへは取材に?」
女将の香織に言われ、思わず正直に綾香の誕生日プレゼントで旅行をせがまれて来たことを話した。
「これからは、私たちも先生と呼ばせていただきます」
女将の香織が微笑して言う。
「綾香姉、ここじゃなくて海外旅行とか、思いきっておねだりすればよかったのに」
「先生も私もそれなりに忙しいの!」
自分が官能小説を書いていると巫女の恵美が知ったら、どんな顔をするだろう。
思わず昼間のこともあるから恥ずかしくなる。
「私も田舎から離れて暮らそうかな」
智美はそう言ってから、ウイスキーの水割りをぐいっと飲んだ。
「ここじゃ、彼氏もできないし」
「夏に町にいけば人だらけでしょ?」
「そうなんだけどね」
智美がこちらを見つめて、頬を赤らめたまま目を細めると、にこっと笑う。
「先生みたいな人がいればね」
「もう酔っぱらってる。この子ったら」
女性四人は、男性には口に合わない不思議な水で酒を水割りにして飲んでいる。
「たしかに優しい人を見つけたようですね」
巫女の恵美が言い、かなりドキリとした。
「ええ、巫女様、とても優しい人なんです」
綾香が言ってこちらを見つめた。
濃い熱い緑茶をちびちびとすする。
「今の時代は誰と一緒になってもいいし、差別されたりもしないのだから」
巫女がつぶやくようにしみじみと言う。
「お母さんもいい人見つければいいのよ」
智美に言われて、香織はふっとさみしげな表情になったが、すぐに笑みをつくる。
「もう若くないもの……」
香織が言うと、綾香が言った。
「そんなことないわ」
巫女の恵美が言った。
「私で最後か、香織で最後か。
それとも綾香や智美も因縁があるかはわからない。二人とも男の子を産みなさい」
香織が綾香の目を見つめて言った。
「綾香さん、因縁の話を先生にするために、ここへ連れてきたんでしょう?」
「……そうよ」
「巫女様もいらっしゃるし、ちょうどいいわ。
ねぇ、先生、この話は小説になさらないと約束してくれますか?」
「わかりました」
すると智美が席を立った。
綾香がテーブルの下で手を強く握る。緊張して汗ばんでいる。香織の顔を見ると笑顔は消えていた。綾香にうなずくと、綾香が香織と巫女の恵美を見つめた。
「智美ちゃんは?」
「あの子はこの話はあまり好きではないので。いつもこうなので気にしないて下さい」
巫女の恵美が話し始めた。
「この土地の女は水の女とかイザナミの娘と呼ばれていた過去があります。この土地の男は猟師が多かったので、獣の皮を剥いだりして毛皮を売っていたり、山菜や薬草を売っていました。仏教では不殺生という考えもあり、また江戸時代の身分制度の名残で、この土地の者は忌み嫌われていたのです」
「披差別部落だったとはうかがいました。今はこの国にそんな差別があったことすら知らない世代になっています。結婚や就職で差別された時代があったのは、知識としては知っています」

SNSでこの小説を紹介

人妻/熟女の他のリレー小説

こちらから小説を探す