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もうじき
官能リレー小説 - 人妻/熟女

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もうじき 21

翌朝、彼は滝で全裸になり禊を行った。そうでもしなければ一睡もせずに耐えてもなお猛る血の疼きを制御できないと判断したからだった。
畜生堂で目ざめて、テントの中にも彼がいないとわかった香織は彼が禊を終えて戻るのを、一人でインスタントコーヒーを淹れて喫煙しながら待っていた。彼と一緒に禊をすればどうなるかはわかっていた。
朝の光の中を、木々の枝を咲く花の蜜を求めて小鳥どもが囀ずりながら渡っていく。
虚実ないまぜの噂の坩堝である霊場で、山を訪れた修験者のような彼と交わる者を黄泉おくりにする忌まわしき怨念の化身の女である自分は何をしているのか、ぼんやりと考えている。
香織は煙草を焚き火に投げ込むと立ち上がり、空を見上げて朝日に目を細めてから歩き出した。
滝に全裸で打たれながら、全身を冷たい山の水でこわばらしている彼の姿は屹立した一本の性器のように香織に思えた。
香織も衣服を脱ぎ、白い柔肌を朝日にさらして爪先を水い入れて彼に近づいて行った。そして、彼の冷えきった体をつつむように首に手をまわして抱きしめた。
オニゴとも忌み子とも呼ばれている彼は抱きしめられて震えているだけの若い男だが、香織は屹立した性器をつつむ淫蕩な女そのもので何が悪いのかと思い、唇を重ねて舌を彼の温かい口に忍び込ませる。
彼を黄泉おくりにしないように何度でも孕み続けてやると、彼の肌を撫でまわし、さらに舐めまわした。
彼は香織の肩をつかんで、悲しげな表情で体を離すと背中を向けて水から上がる。
彼は痛いほど勃起していた。山の風は陰茎をなぶり、日の光は水をはじく肌を照らしている。彼は岩場で何も言わずタオルで体を拭った。衣服をまとうと一度、香織のほうに振り返った。
髪はまだ濡れていた。
香織は拒まれ、彼にかける言葉が見つからず、腰のあたりまでは水の中で、上半身は山の風にふれ、日の光を浴びて彼の姿を見つめていた。
先に声を上げたのは香織だった。
「なんでなのよ!」
香織の中で何かが裂けた。
彼は黙って見つめているだけだった。


香織は彼の子を孕んだ。
産みたいなら産めばいい。生まれてくる者がどんな者であれ、生を授かりこの世に現れたからには人にはわからない宿命を持ち、誰でも罪の穢れなど何一つありはしないのだと、巫女の恵美は香織に話すのだった。
香織が巫女の恵美に子を孕んだことを告げた日も、彼が訪れた日のように雨が降っていた。
彼は民宿に一年間ほど滞在して、それまでの拒んできたのが嘘のように香織を抱き続けた。
香織は肌をすりよせ、唇を重ねて唾液をすすり、喉を舐め胸まで下りていく。香織が彼の小さい勃った豆粒ほどの乳首に吸いつき、舌で転がし、彼が身悶えて逃げようとすると、彼にしがみつき背中に爪を立てる。彼の背中には彼が香織のものだと刻まれたように傷ができて血が流れて、蒲団のシーツにも数滴、ぽたぽた血が落ちる。
巫女の恵美は彼が香織に悦びを与え、亡霊を転生も叶わぬほどに破壊して消し去る、神殺しの神スサノオのごときオニゴの神通力を失った。
彼にとって怨霊から生きる者を守るという存在意義を失うことになったのである。
香織は彼がどこかでどんな存在になったとしても、生きているだけでいい。

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