熟女クエスト 7
町長の方もそんなリオの言葉にいちいち頷いたり、驚いたり笑ったりと、まるでおじいちゃんと孫のようである。
そんな話しをしながらも町長は手紙を書き終わったようで、机の中から封筒を取り出して、今まで書いていた手紙を納めると、蝋印を施してしっかりとリオに手渡した。
「それでは勇者リオ殿。この手紙をドワーフの長へとお渡しくだされ」
「はい、お預かりしました。勇者リオが確かにドワーフの長へとお渡しします」
格式張った言い方で、子供特有の高い声が町長の執務室に響く。
そんな堂々とした受け答えに、母であるマリアは少し瞳を潤ませていた。
「さて、それではこれからどうしますかな」
町長の問いにマリアは表情を引き締め答えた。
「まだ日も高いですし、今日のうちにダンジョンを攻略しようかと」
ドワーフがいるとされる洞窟ダンジョンは地下五階。特に罠や迷路じみたものではないため、子供の足でも夕方までには攻略できるだろうというのが、マリアとエリーナの考えだった。
その言葉に町長も賛成し、馬車の手配と食事、さらにリオへのプレゼントを用意してくれた。
宝箱を執務室に運ばせた町長は、その中を開けるようリオに促す。
リオが喜々として開けると、その中には緑の宝石が埋め込まれた銀製の腕輪だった。
「これは……」
「力の腕輪、ですか?」
リオの後ろから覗き込んだマリアとエリーナが問うと、町長は楽しそうに頷いた。
「さすが勇者パーティーのお二人ですな。これは腕にはめると、力を高める効果を持つマジックアイテムなのです」
試しにはめてみる。
「うーん、よく分かんないや」
腕をぶんぶん振ってみるが、特に力持ちになったようには感じない。
「リオ殿、この宝箱を持ち上げてごらん」
不満そうな表情を読み取った町長はそう言うと眼前の宝箱を指差した。
「えー、無理だよ。さっきも大人のお兄さん二人がかりで運んで来たじゃん」
そう言いつつ、宝箱に触れると、ひょいっと簡単に持ち上がってしまった。
マリア、エリーナや町長、リオまでもが驚愕の表情を浮かべる。
この手のマジックアイテムは普通ならプロパティの「ちから」にプラス3から5くらいが相場なのだ。9歳児の「ちから」が3から5増えたぐらいで、重厚な宝箱が持ち上がるはずがない。
エリーナが慌ててプロパティチェッカーを取り出してリオの額に当ててみると、
「嘘でしょう? 「ちから」の数値が99+になっているじゃない……」
まさに呆然といった口調だ。
その後も腕輪を外して他の人がはめて確かめてみたが、特に大きな変化はない。
「うーん、これはもしかしたら何だけど」
思案げに腕輪を調べていたエリーナがいう。
「リオ君の個人的な相性と、勇者としての力が合わさって、普通とは違う大幅な能力値の上昇となったのではないかしら」
ほかの者たちも、特にその意見に反対することはなく、また町長も、
「これはもうある意味リオ殿が出会うべくして出会ったのでしょう。どうぞそれを貰ってくだされ」
笑いながらそう告げる。
それなら、ということでリオは腕輪を再びはめると、馬車で小一時間ほどかかる裏山の洞窟までマリアとエリーナを伴って挑戦することにした。
洞窟の前には、頑丈な柵が設置され、三人の男たちが槍や剣などの武器を持って見張りをしている。
馬車の御者(マリアたちを見てずっと前屈みになっていた)が言うには、前々から洞窟ダンジョンにはラットやスライムなどのモンスターがいるため、柵で入り口を封鎖し、勝手に入れないようにしていたのだという。
「じゃあなんでドワーフがいるって分かったの?」
マリアが不思議そうに聞く。
その言葉でふるふる揺れる乳房を見て、ますます前屈みになりながら御者は説明した。
「へえ、何でも見張り番たちが洞窟の中からこちらを窺う小柄な人影をみたって話しでして……」
なるほど、とマリアが頷き、その拍子に揺れる乳房を見て御者は更に前屈みになる。