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ナースcalling!
官能リレー小説 - ラブコメ

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ナースcalling! 8

背は高く、体つきも男らしい。
顔もどちらかというと整っている。
ハルカの視線がヒロトの瞳を捕らえる。
そしてハルカは、ハッと我に返った。

「秋吉さんは患者さんですから」

「そう固くならないでさっ。俺も患者だったわけだし……」

「吉永さんっ!」

 ついにハルカは声を張り上げた。

「いい加減にしてくださいっ。私は車椅子の使い方を説明したいんです」

 あまり声を荒げることをしないハルカ。
 慣れないことをしたせいか、ハルカの鼓動は少し早くなっていた。

「じゃっ、じゃあ……しっかり聞いてくださいね」

 ハルカは視線を車椅子に向けたままヒロトを促す。
そのヒロトはというと、ハルカに注意を受けてあからさまに落ち込んでいるアキオをニヤニヤしながら見ていた。
言わんこっちゃない、とヒロトの目線が追い討ちをかけていたのだった。
しかしすぐ、その視界はハルカを捕らえることとなる。
ヒロトまでお叱りを受けるのはゴメンらしい。
それに車椅子を使えるのなら、退屈一色で彩られたこの生活にも少しは面白味が出ると考えたのだろう。

「左に曲がるときは、右の方を大きく動かしてください」

 中腰のハルカは相変わらず車椅子を見たままだった。
ここがこう、ここはこうと子供へ言い聞かせるように優しく厳しい口調で説明を続けている。
ヒロトは今後のために、何時になく集中して聞いていた。
腰を軽く曲げて屈むハルカの肢体はしなやかな曲線を描き、ベッドの上から聞いているヒロトには刺激的に映っていた。
横顔からでもわかる可愛らしさと、清廉さ。
ショートカットの上に乗ったナースキャップは相変わらず清らかな印象を与え、眩しいくらいだ。
それの清潔感はナース服からも滲み出ており、ハルカの心まで真っ直ぐ澄み切っているように思わせる。
しかし、白いストッキングに覆われる美しい脚は男心を刺激し、煩悩を誘った。

「念を押しますけど、絶対に一人では使用しないでくださいね?」

 宙を滑る毛先。
車椅子を閉じ込めていた瞳孔に、ヒロトの顔が映り込む。
同じく、ヒロトの瞳はハルカの全貌を取り込んだ。
もしかしたら、その一瞬は初めてのことだったかもしれない。
優しく真摯に話し掛けるハルカは愛想の悪いヒロトの横顔を、鬱陶しい声を聞き流すヒロトは退屈の象徴たる白い天井を、それぞれ見つめていた。
その視界に今、互いの顔が一直線に入っている。
瞳と瞳とを映し合い、しっかりと輪郭をなぞっていく……。
予想もしていなかったハルカ。
不意を突かれたヒロト。
互いに胸を跳ね上がらせ、慌てて顔を背け合う。
そして、何故かじわじわと染み出してくる気恥ずかしさに、二人して顔を赤くしていた。

「わ、私は、これで……っ」

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