ナースcalling! 6
投げだされた物は……。
「ゲーム機!?」
「お土産……出来る様に早く治せ」
アキオはイタズラっぽく片目をつぶって見せた。
「はぁ……」
明らかな愛想笑いを浮かべるヒロト。
「それだけじゃないぞ!」
嬉しそうに顔を綻ばせたアキオがまだ何か……カバンの中から取り出した。
「あぁ!?」
取り出したのは明らかに大人の雑誌……これにはヒロトも呆れるしかなかった。
だが……間違いなく、これがアキオのいい所でもあった。
「フ……フハハハ」
ヒロトは楽しげに笑い出していた。
溜まりに溜まった鬱憤が、自然と誘い出されたかのように……。
*
車椅子を押すハルカの顔には、胸から溢れ出た喜びが滲んでいた。
検査の結果、ヒロトは驚異的な程順調に回復している。
ハルカの喜びは、担当患者が元気になっていくのを目の当たりにして思わず湧き出た、看護師として純粋な感情なのだった。
今押している車椅子には誰も乗っていない。
検査結果を診たミチルに持ってくるよう言われ、空の車椅子を押しながらヒロトの病室へ向かう途中なのである。
「あ、作島先生っ」
そこを曲がればもうすぐという角の辺りまで来たハルカは、丁度そこから姿を見せたミチルに声をかける。
「秋吉さん、検査結果通りでした?」
「さぁ。見た目ではよくわからなかったわ」
早口に言ったミチルは誤魔化すように微笑んでみせる。
「後はよろしくね」
「はいっ」
明るい声色に見送られ、ミチルは早足にその場を離れていく。
一方、ヒロトの病室の前へ至ったハルカは軽快なノックを響かせていた。
「秋吉さーん」
ぶっきらぼうな合図を待つハルカ。
人を毛嫌うような態度には少し手を焼くが、どこか憎めない。
初めのうちは環境の変化に戸惑い、気を落とす患者も少なくはない。
きっとヒロトも、回復するにつれて元気を取り戻していくだろう。
そんな事を考えているハルカ。
しかし、だるそうな返事が返ってこない。
「秋吉さーんっ」
「は、はいっ」
漸く得られた返事にハルカは胸を撫で下ろす。
意識を失っていたわけでもなければ、勝手に病室を抜け出したわけでもないらしい。
「入りますよー?」
病室の扉を滑らせ、ハルカは車椅子を押した。
「もぉっ。直ぐに返事してくださいよ……って、あれ? 吉永さん……ですよね?」
「はぁ、はぁ、え? ハルカちゃん?」
「あれ? はぁ、お知り合い、ですか? はぁ……」
ハルカとアキオのやりとりに当然の疑問を口にするヒロト。
「あれだ。はぁ、昔、入院したときに、はぁ……世話になった」
アキオは息も絶え絶えにヒロトの疑問に答える。
「お世話したのは高原先輩です。私は見てただけですから」